絵筆のいらない絵画教室
価格: ¥1,680
「絵が上手くなるには、まず、絵をかかないこと」。これは一体どういうことだろう。レオナルド・ダ・ヴィンチを敬愛するこの美術評論家は、東京芸大で美術解剖学を専攻。東大の解剖教室で人体解剖も研究した。「美術と解剖なんて、どうして?」と思うのは素人だ。イタリア・ルネッサンスの巨匠ダ・ヴィンチはあらゆる動植物や人間の体を徹底して観察した。解剖し、色や構造を調べ、設計図のように詳細なデッサンをした。すべてを見つめ尽くした結果、個性あふれる多くの傑作が生まれたのだ。
良い絵とは何だろう。芸術には基準がない。しかし芸術の本質とは、「世界をどのように見るか」である。描くテクニックなどはさまつな枝葉にすぎない。優れた絵とは「本質」をつかんでいるもの。だれが見ても、「ああ、いいな」と思える生き生きとした絵のことだ。かくして、『絵筆のいらない絵画教室』の登場である。これはダ・ヴィンチの理想世界に近づくためのトレーニングなのだ。「魚を釣る。解剖して観察する。その感動を絵にかく」。効果はNHKテレビ「課外授業・ようこそ先輩」で実証済みだ。「目の視覚」「脳の視覚」「こころは内臓にある」ほか、筆者の説く「美の理論」も興味深い。親や教師のための丁寧な「実践篇」もついている。(家永光恵)