虎の夜食
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モダンの風、
華麗のち不穏、
時々笑い、
沿岸部は一時艶っぽいでしょう。
〈京寒し金閣薪にくべてなほ〉
〈物容るゝ壜も物言ふ壜も夏〉
─ この人の背中を見ながら僕は俳句を作ってました。
千野帽子 (書籍版帯文)
・自選十二句
殺さないでください夜どほし桜ちる
でうす様 自転してゐる花の庭
行春や機械孔雀の眼に運河
鳥帰る東京液化そして気化
漏電や蓮の上なるユーラシア
総崩れの寺引いてゆく花野かな
夏草を科学忍者は軽く踏み
鰯雲どのビルも水ゆきわたり
よきパズル解くかに虎の夜食かな
美しい僕が咥へている死鼠
聖夜わが領土は半円のケーキ
任天堂の歌留多で倒す恋敵
・著者略歴
中村 安伸 なかむらやすのぶ
1971年奈良県生まれ。1996年より「海程」に数年間投句を行なう。2004年より「‐俳句空間‐豈」同人。2008年夏、高山れおなとともにウェブサイト「‐俳句空間‐豈weekly」を立ち上げる。(2010年終刊。)2010年、第三回芝不器男俳句新人賞「対馬康子奨励賞」受賞。2015年、今井飛鳥、大野円雅とともに、日本文学を朗読と歌曲に翻案するバンド「汀の火」を結成