「脳」を学び「リハビリ」の最前線を知るには最適な本です
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歯科医師であった祖父、父が共に60歳台で倒れた家系なので、同業である私も
還暦を迎えた今、「脳」、「リハビリ」を更に学ぶため「備えあれば憂いなし」
と本書を手にした。
はじめに脳の病気で起こる運動障害を挙げ、読者に六つの謎を投げかける。
そしてそれらを解いてもらうために脳の基本的な機能を丁寧に説明していく。
「リハの本質」とは残存機能の回復に留まるものではなく、更に神経回路の再構築まで及ぶと説く。
非常にわかり易く、頭に入り易い。
最後に、最新の治療法である「経頭蓋磁気刺激法」を用いた治療例を具体的に紹介しているので
リハビリ中の方、家族の方にも参考になると思う。
火星表面の精密地図が作成されている現在、「最後のフロンティア」である脳を探索する
最新の機器でありながら、まだまだ機能に制限のある発展途上の経頭蓋磁気刺激装置の開発
のためにも多くの理工系の学生に読んで欲しい一冊である。
たまたま、この本の前にアメリカ人の脳科学者の「奇跡の脳」を読んでいたが、本書に触れて
「脳」の持つ柔軟性をより深く理解できたのは幸いであった。
しずかに理解しやすく書いてあるけれど脳の医学の凄さがわかります
★★★★★
脳梗塞や脳出血で脳に障害を受けることで運動ができなくなった場合のリハビリテ−ションに、経頭蓋磁気刺激という治療法を、運動と組み合わせて行う新しいリハビリテ−ションの治療方法についての、縦書き・平叙文による解説書です。身体を脳がどのように制御しているか、という解説に始まり、磁気刺激とは、そして、医学と工学関係者が協力して、患者さんの運動障害に合わせて磁気刺激を組み合わせた治療方法を開発していく経過、その成果について書いてあります。とにかく、わかりやすいのが長所です。とはいえ、素人向きにやさしく書いた、というのではなく、淡々と、順序良く、膨大な各種の研究のエッセンスを要約してくれているので、なぜだか頭に入ってきてしまう感じです。図も多く、数えたら86枚もありました。2.4頁に1枚です。心から著者に敬服したいと思います。
経頭蓋磁気刺激に興味があるけれど、横書きの論文やレビューは読みにくくってかなわない、というリハビリテ−ション関連職種、あるいは学生、あるいはリハビリテ−ション工学に興味のある学生さんにはお勧め。また、普通の、知的好奇心の強い、大人の科学的読み物としてもお勧めです。理科系の新書がお好きな人にはぴったりでしょう。
脳の研究の進歩は凄い! と思いますが、同時に、指一本動かすのにすら、多大な研究の蓄積が必要だったこともよくわかります。 脳の研究頑張って! 研究者の皆さん頑張って! とエールを送りたくなる本です。