まず、谷川俊太郎さんの詩は、難しいものからひらがなだけのものまでバラエティに富んでいます。「あさ」に
掲載されていた詩と比べると、落ち着いた、わびさびの利いた少し技巧に凝ったものが多い気がするので、
もしかしたら好き嫌いが分かれるかもしれません。「祈り」という詩の思いは強く伝わりましたし、
「夕暮」の最終連の「オチ」(上手いコトバが見つからなくて・・・)には考えさせられました。
吉村和敏さんの写真は、赤毛のアンの暮らした世界一美しい島プリンスエドワード島、赤毛のアンの生まれた
ニューブランズウィック、ノバスコシアやメープルでなじみ深いケベックなど、カナダの原色的な
風景を被写体としています。カナダに魅せられた写真家の作品です。ほとんどは「夕」をテーマに
していて、星野道夫さんのような力強く寂しさのある風景写真もありますが、葉祥明さんの絵のような
原色的な被写体をそのまま前面に押し出した写真もまた魅力です。個人的には「アンの幸福」のジム船長の灯台を
思わせる写真に強い印象を受けました。本当にきれいです。
谷川俊太郎さんの詩と吉村和敏さんの写真が非常に相性がいいのか、相互に印象を強め、調和している気がします。
技巧的な編集をされた本ですが、出版社の企みに引っかかってもいいかな、という気がします。
中程に2人のメッセージが掲載されていましたが、芸術家なのだから、その分写真と詩をもう1つ
ずつ増やして芸術で語ったほうが本来的だと思いました。
元気な「あさ」と比べて寂寥のある詩としみじみとした美しさのある風景が組み合わされていて、セットで揃えたい
本です。