童話で学ぶ仏教
★★★★☆
著名な「仏教童話」を紹介しつつ、それをもとに「縁起」や「慈悲」など仏教の基礎的な教えを解説するという趣旨の本。読者の理解を進めるために、ところどころで著者の人生上の苦労話や目の醒めるような発見などが記されており、単に仏教の話だけにはならなくて、これはよかった。取り上げられる童話は、「死人の出たことのない家から香の火をもってきなさい」のあれや「複数の盲人がぞうに触る」例の話や「毒矢の例え」など、仏教に詳しい人ならお馴染みの説話から、新美南吉の『ごん狐』や芥川の『蜘蛛の糸』までと、なかなか幅広い。ちなみに、本書は著者がアメリカ人留学生に日本語を教える際、仏教童話をテキストにすると教育効果が高い、ということに気付いたことから出来た作品であるそうで、この本のとっつきやすさを考えると、確かにその教育経験はよく活かされているなという気がした。丁寧な言葉で書き綴った、わかりやすい仏教入門書に仕上がっていると思う。