真夏の島を感じさせるが。
★★★☆☆
垣根亮介氏の作品は、ワイルドソウル、午前三時のルースターなどニッチな国を舞台とした人種ドラマと借金取りの王子などの純粋な人間ドラマに分けられるのではないかと思う。
本作は、そのどちらの要素も持っており、一方で同氏の特徴である車や武器などのマニアックな描写は無い。やはり帯にあるように新たな代表作なのか?
読み進めればフィジアンのおおらかさやアバウトさ、サティーをはじめとするインド系住民やヨシ、ダニーのアジア系の細やかさ(常識)が複雑に絡み合いそれはそれでおもしろいのだが、ストーリー自体は単調に流れる。クーに便乗した事件後の登場人物のあり方に人生の難しさを感じるものの、やっぱりのっぺりした印象は拭えなかった。
もしかしたら、電車の中で読むのではなく、バカンスでゆっくり何も考えずに読む作品だったのかも知れない。少し時間を置いて別のシチェーションで読んで見るのも一考か。
フィジーの国の様子が面白く書けています。
★★★★★
垣根涼介氏の本は、ワイルドソウル以来全部読んでいます。
愚作もありますが、本書はフィジーの様子を男女の機微に絡めて
面白く纏めています。
ニューカレドニア、ハワイ、バリ、ケアンズなど旅行していますが、
今度はフィジーに行きたいと思うような本でした。
幸せな人生とは?と自問してしまう
★★★★★
日本人とある意味で対極(どういう意味かは読めば分かりますが)にあるフィジー人を
通じて、本当の幸せとは何か、を問いかける良作。お金がある暮らしとは、本当に幸せ
な事なのか、を本作ではずっと問い続けている。そして最後に分かる「楽園」の意味…。
日々の仕事に追われ、それが当たり前だと思っていた自分にとって、非常に印象に残る作品
でした。そして本作の著者である垣根氏の守備範囲の広さにも脱帽です。垣根氏の描く
ハードボイルドな世界も好きですが、「借金取りの王子」や本作のような、人生の幸福の
意味を問いかけるような作品もまた、魅力的だと思います。
ただ唯一何点を挙げるとすれば、主人公4人のうち、「アコ」の存在感と言うか、位置づけが
途中から非常に曖昧になってしまったように感じること。日本人は「ヨシ」一人でも良かった
のでは、とさえ思いました。
文化と価値観について考えてしまう本です。
★★★★★
たまにいろんな本で著者が発する、「日本人は貧乏くさい、貧乏なのではなく貧乏くさいのだ」というメッセージを思い出した。いつのまにか、お金を貯めることが生きがいになる日本人の幸せってなんなんでしょうか。フィジーを舞台にした価値観の異なる人間たちの物語を読んで、生き方について考えさせられました。
フィジーに行ってみたくなった
★★★★☆
これを読んだら思わずフィジーに行ってみたくなるような作品であった。陽気で身体が大きいのだが、豊富な食料があることから仕事は怠ける傾向があるフィジー人とそこに共存するインド人、中国人、日本人など、各人種のそれぞれの立場での考え方が適切に表現されていてとても読みやすかった。そんな中でも裏表のないチョネの人柄には実に好感が持てた。いつでも明るく能天気で無邪気なフィジー人、そんな彼にみんな惹かれていくのは分かる気がする。アコが見つけたかった何かというのもこのフィジー人特有の自由だったと思う。