本作で歌われる物語の内容はさまざまだ。血で血で洗う争い、裏切り、処刑。酔っ払ったあげくの殺人、幼児殺し、集団溺死、奇怪な訪問者。実際、本作に登場する死者の数はクエンティン・タランティーノ監督の映画にひけをとらない。だが何よりも目につくのは、実らぬ愛、果てしない悲しみ、死の余波であり、そうした題材にふさわしい深い情感が、テイバーの透明感のある凛(りん)とした歌声によってもたらされている。伝承音楽の研究者なら、あるいはルーツ・ミュージックやアメリカン・ゴシックのファンなら、この丹念に研究されたコレクションは愛聴盤になるはずだ。そして、悲劇的な大いなるロマンスに心揺さぶられるリスナーなら誰でも、今すぐ本作を手にとるべきだ。(Dominic Wills Amazon.co.uk)