本書は、それぞれのツールはもちろん、移植性のあるC,C++,シェルスクリプトの書き方、共有ライブラリの作成方法等を実際にソフトウェアパッケージを作成する例を通して紹介しています。
ただ、想定する読者像が不明瞭な点が気になります。
入門書ではなく、かといって実践的なものでもなく、ある部分でさらっと流すだけだが、また別の部分では懇切丁寧に解説していたり
各章の重み付けに統一性が無く、話の本筋を見失ってしまいそうになります。
(複数の著者によって書かれた所為かもしれません)
既にソフトウェアを作成、配布している読者がAutotoolsの仕様を試みる場合、本書は有用です。
ソフトウェア開発/配布に対する十分な前提知識を持ち合わせていない読者の場合には本書は少々難解ですが、為すべき事を適切に把握でき、また必要な情報のポインタも十分に示されているので、Autotoolsの世界へのガイドとし十分に機能するでしょう。
本書は訳本ですが、日本語としてすんなりと読める文章になっています。
訳注も豊富で、訳の質は高いと思います。
その問題を避けるためにシステムごとの差異を吸収するconfigureスクリプトを生成するAutoconfとその派生ツールはつくられました。
この本は、Autoconfの使い方を通して、移植性の高いソフトウェアを書く指針も示しています。
オープンソースのUnix系プログラマは必読です。