学生はもちろん、卒業した方たちにもオススメです。
★★★★☆
自分がゲイだということを誰にも話せず、両親の海外赴任を機に一人暮らしを始める主人公、夏希(高校一年)。
引越し初日から一人暮らしの不安に駆られて泣いているところを隣人の圭介(童話作家)に見られてしまうが、「ご飯食べにおいで」と優しく迎えられ、夏希はさり気ない圭介の優しさに惹かれていく。
だが、いざお邪魔してみると、圭介の部屋には一緒に童話作家として活動している千晶という同居人が居た。
自己紹介で「俺たちゲイなんだけど」と告白されてしまった夏希は早くも淡い恋心を断たれてしまうが、実は千晶にはちゃんと別に恋人が居て……。
文そのものから、視覚から、心に入り込んでくる「夏」という季節がとても印象的でした。
将来の夢を持たず、言葉では言い表せない思いを抱える夏希が、才能あるアパートの住人たちや友人から影響を受けて、ゆっくりと前へ踏み出していく。
キャラクターたちはそれぞれにやりたいことをやっているだけなんですが、その言葉の端には夢を持つ者の力強さがありました。
その一方で、圭介との間には踏み出したくても踏み出せない理由が出てきたり……と、読んでいてきゅんとなる場面も多くあります。
大抵の人が悩む「将来」と「恋愛」。まだ高校生になったばかりの主人公が、その不安定な感情をリアルに伝えてくれる作品だと思います。
読み終えた後の爽快感を、是非感じてください。
真っ青な夏の風景
★★★★☆
読み終わった後、キラキラ青い夏の風景で胸がいっぱいになりました。
取り立ててドラマティックな訳ではないのですが、風景、小物類、人物の描写が巧みで、
頭の中でずっと映画でも観るように画像が流れていた気がします。
主人公には少年らしい瑞々しさがあり、その彼を優しく見守る二人の童話作家との微妙な
三角関係も心に温かく、夏の花々の中、小さなプールに足を浸したような、とても爽やか
な読後感でした。
H度は低めですが、夢花李さんが挿絵を担当されている小説の中でも群を抜いて、書き手
と描き手、相乗効果の高い作品だと思いました。
ただ、個人的にあまりにも気に入ったが故に、「自分のツボ」にハマり過ぎたのか、という
不安もあり(笑)☆4つにしました。
わたし的には文句ナシの☆5つデス。
少年と童話作家の青年の恋。爽やか初々しい系をお好みの方にお薦めです。