筆者はとある事業会社の財務部で資金調達を担当しています。これまで、日本国内外で金融機関借入や社債発行などの実務に携わってきました。金融機関のプロの方達を相手にする中で、自分の知識不足や、彼らとの情報の非対称性を痛感する場面が多々ありました。自分の知識不足は不勉強の結果ですが、情報の非対称性に関してはある種超えられない壁の様なものを感じます。資金調達の担い手である事業会社の立場から見ると、一般に公開されている情報には限りがあり、既に社内に十分にノウハウが蓄積している企業であれば話は別でしょうが、例えば取引先の金融機関から提示される手数料一つをとっても「これは妥当な水準なのか」という不安に駆られることがありました。サービスを提供する側の金融機関と違って、事業会社の一担当者であれば、種々の業務の中の一つとして資金調達という専門性の高い業務をこなさないといけない場面も多いでしょう。

拙著『入門者のための社債発行実務』では、日本国内での普通社債発行業務を扱いましたが、本著では短期社債 (コマーシャルペーパー、CP) の発行実務を対象としています。ディーラー業務契約や発行・支払代理人契約など、短期社債を発行する為のセットアップから、実際の個別の短期社債の発行手続きまで、事業会社側の担当者の方 (特に不慣れな新任の方) に役立つ情報をお伝えできればと思い書き進めました。