越前の諸道を巡りながら、継体天皇から、道元、一条兼良、朝倉義景、あるいは永平寺や千石舟、古越前といわれる焼物等々、越前にゆかりのあるひとやものどもについて、著者の司馬史観が時代をいきつもどりつ展開されます。また、かっては道元が居住したものの、今ではうらびれた寺で修行する雲水や、古越前の伝統を受け継ぐ無口な焼物師等々、名もなき愛すべきひとどもが著者の暖かい眼差しで描かれます。司馬史観の知的刺激と名文による味わい深さが味わえる「街道をゆく」の中でも好きな1冊です。