『脱出』『未来惑星ザルドス』など、絶えず異能的問題作を世に送り続けるジョン・ブアマン監督が、中世イギリス・アーサー王伝説を映画化。そもそもアーサー王伝説オタクだという彼のこだわりが随所に現れた秀作である。
   湖の聖霊から授けられた王者の剣エクスカリバーを手に入れたアーサー（ナイジェル・テリー）は、やがて円卓の騎士を従えて国家の統一をめざす。史劇スペクタクルの痛快さよりも、魔術と殺りくの暗黒時代描写に力が入っており、あたかもシェークスピア悲劇を観るかのような重厚さ。魔術師マーリン（ニール・ウィリアムソン）に焦点を当てているあたりも、異能の監督ブアマンらしい。イギリス映画界の渋い名優たちが勢ぞろいしているあたりも通好みのキャスティングである。（的田也寸志）