BOPのイロハが手に取るようにわかる本。
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「ネクストマーケット」が初めて出版されてから早や5年だという。最近ではBOP関連のニュースも時折取り上げられるようになってきたが、ほんのちょっと前まで、私自身含め、多くの人が「BOPって一体何?」という状況だったのではなかろうか。
本書では、「すでに走り出している」企業の豊富な事例・CEOのコメントをもとに、BOPが貧困層・企業双方にとってwin-winをもたらすものであることを紹介。さらに貧困層がこうしたサービスを享受することで、「人間の尊厳を取り戻し、ひいては社会変革につながってゆく可能性」をも伝えている(付属のDVDでも著者が熱く語っている)。
実際に企業がBOPビジネスを成功させるには、数々のハードルがあるかもしれない。しかし、貧困層に目を向け、こうした取り組みを積み重ねることで、少しずつ先進国・途上国双方の意識変革につながるのだろうなと実感した。
「ビジネスのノウハウ」と「貧困層の人々が持つ潜在力」と一見相いれなさそうな二つの要素を結びつけることによる社会変革の考え方は、開発問題やグローバル化に直面する多くのビジネスマンだけでなく、日本国内の行政に関わる人々にも示唆をあたえるのではなかろうか。
貧困層が「お客様」になる 〜 パワーアップして登場!
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---BOP(ボトム・オブ・ピラミッド)と呼ばれる世界の最貧困層が、
今後は世界の消費を支える重要な消費者層になる。
彼らはちゃんとお金を持っていて、所有する喜びを求めている---
旧版の各事例にさらに詳しい説明が添えられ、
新しい事例も加わり、パワーアップしています。
CD-ROM付きで、事例を目で見て学ぶことができ、非常に濃い内容。
日本企業がアジアをはじめとする新興市場に
生き残りをかけて展開する時代。
新興市場から発展途上国に対象が移行する時代もそう遠くはないはず。
いま読んでおくべき本でしょう。
私利の追求が世界の貧困撲滅に貢献するには
★★★★☆
発展途上国で貧困層相手にビジネスする方法についての本。途上国の貧困層は所得が少ない。また先進国で売られているような高機能の商品への関心がない。したがって、貧困層向けのビジネスは利益を生みにくく、成功しない。貧困層は福祉の対象であって、ビジネスの対象ではない・・・。
本書は上のような先入観に対して批判を加える。つまり、途上国の貧困層向けのビジネスは、先進国の大衆向けのビジネスとはやり方が異なる。そのやり方さえ押さえられれば、成功することもできるのである、と。そのやり方を多くの事例研究から引き出してくる。結論は最初の200ページ弱にまとめられている。それ以降は事例の詳細な提示である。したがって、冒頭の200ページだけを読んで論点をつかむという読み方もできる。
だが、著者の狙いは単に貧困層でビジネスをして利益を上げることにあるのではない。著者は、私利を追求する資本主義的企業にも、貧困の解決に向けてできることがあるのではないか、と問うている。貧困層を資本主義的に搾取する方法ではないのである。企業は私利を追求するのだが、それが(神の見えざる手によらず)貧困の解決に寄与することができる。それが著者の主張である。
したがって重視されているのは、貧困層の人間が自主的になることである。企業家精神、イノベーションを貧困層にもたらすことである。例えば、農村地域にコミュニティを作らせ、地域からリーダーを選んで販売網に組み込む。こうして単に商品を売りつけるのではなく、雇用を創出し、ノウハウを付与する。著者によれば、このような試みが貧困層に自主的に考える機会を与える。そしてそれは地域の経済の改善へと向かっていくのである。
もちろん、すべての途上国でこのようなことが可能であるわけではない。何よりも、企業が安全に活動できるような治安やインフラが必要である。それが欠けている地域−−例えばソマリア、コンゴ、ハイチ、パレスチナなどだろうかーーでは著者のアプローチが不可能であることは、著者も認めている。
一見、企業にはこんなリスクを取る必要があるのかと思ってしまう。途上国の貧困層向けビジネスは困難な試みである。いくらそれが貧困の改善に寄与すると言われても、大きなリスクであることに変わりない。しかしここには思いがけぬリターンがあるのだ。途上国の貧困層は、「製品やプロセスだけでなく、ビジネスモデルそのもののイノベーションを起こす源泉にもなる」(p.100)のである。
必読書!!
★★★★★
本書はベストセラーだけあって、ビジネスマンであれば読まなくても大筋をどこかで見聞きしているというのが多いのではないでしょうか。私もその一人でした。読まなくても自分は理解していると思っていました。
本書を読んだ感想は、そういった先入観が間違ったものだということでした。企業のサクセスストーリーが羅列された本ではなく、BOP(経済ピラミッドの下層)市場でビジネスをするために必要な戦略が「イノベーション12の原則」として分析されていました。事例も細かく書かれており、ビジネスマンも研究者も楽しめる本だと思います。
潜在的市場の価値
★★★★★
「貧困層」を「顧客」に変えるための基本的な考え方と、実例を示した本。
ウォートン経営戦略シリーズ。
前半は、低所得で購買力の低いとされている貧困層を潜在的市場とみなし、
基本的なアプローチと開発方法が述べられている。
後半は、成功企業の実例が紹介されている。
興味深かったのは、貧困層の市場を開発するにはwin-winの関係を築くためのシステムを
ゼロから構築する必要があるという点。
先進国諸国の常識にとらわれないシステム構築の実例は、非常に興味深かった。
常識に縛られた市場や顧客に対する考え方を、
良い意味で打ち壊す一冊だ。