果実を食べる動物からみた熱帯林の奥深さ
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本書は、1000日間をタイの熱帯林で過ごした大学院生のフィールド研究の記録である。著者は、熱帯林の上空を騒がしく飛ぶ4種のサイチョウと多様な熱帯植物との間にある、太くて脆い相互関係を、観察と洞察によって解き明かしていく。本書を読むことで読者は、一人の大学院生のフィールド研究の現場における試行錯誤と発見の興奮を追体験するだろう。そして、サイチョウなどの野生動物が熱帯林の生態系のなかで担っているそれぞれの役割を知ることになる。このような地道で記載的な自然史研究こそが、熱帯林の正しい理解をもたらし、適切な保全活動のための基礎となる。熱帯林で日々淡々と繰り返される生物間の「一期一会」の関係性と、その研究過程を楽しむことのできる好著として薦めたい。熱帯アジア動物記―フィールド野生動物学入門 (フィールドの生物学)