雪の日。都会のビルの間を抜けて学校へ急ぐ女の子が、雪に埋もれた赤い本を見つける。本のなかには、南の島の浜で赤い本を拾う男の子の姿が。男の子が見ているその本には、雪降る都会のビル群が描かれている。本を窓のようにして、お互いの存在を確認しあうふたりだが…。
本の中にいるのは男の子なのか、女の子なのか。それとも、本を読んでいる「わたし」なのか…。何かに気づいたように本から顔をあげて、ふたりがこちらをじっと見るページでは、どきん、と胸がなる。現実との境が淡くなり取り込まれてしまうような読書の醍醐味を、子どもたちが体感するのにぴったりの本。(門倉紫麻)