まず、「問題はものの量ではなく、持ち物を把握できないこと」。だから、「片づけ、整理は『捨てよう』という気持ちから始めない！」と書かれている。片づけられない自分をつい責めてしまいがちだから、これはかなり心に優しく響いた。
　次に、あの野口式とは反対に、使ったものを右に置き、「左側に溜まった、着ていない服を意識」しようと提案。そのためには、「普段着ている服に目隠し」をし、着ていない服に「自分へのメッセージ」として、簡単なメモをはりつけ、ゆっくり考えようと書かれている。こと服に関しては、たいていの片づけ本には、似たような服や○年着ていない服は捨てよう、たたみ方を工夫しよう、としか書かれていないので、この考えはとても画期的だと感じた。
　また、ものを「もったいないもの」、「自分にとって大事なもの」、人との関係で「大切なもの」に分ける、というのもなるほどと思った。それに「親のものの整理は親の人生と思いを受け取ること」という、老親の家を片づける時の心構えまで書かれて、ドキリとさせられた。
　タイトルがちょっと怖くて、装丁もレイアウトも地味な感じだが、新鮮な片づけ本だと思う。

一言でいうと、生活人の視線に立った「整理整頓」本だった。
「古臭くなったけど傷んでないし．．．」と悩んだら、暫く向き
合う時間を置くことを勧めるなど、読者を追い込まない。
ゆる〜い感じではなく「腰を据えた片付けのススメ」という
雰囲気である。
『片付けは捨てようという気持ちから始めない』というのが
スタート時点での基準として提案されているので「三日間で
片付けたい」という人には向かないかもしれないが、短時間
で片付けるとリバウンドも早いと著者は語っている。
また、「残す覚悟」を決めたモノとの付き合い方についても
丁寧に紹介されていてエコ本感覚で活用できる点は役に立つ
し、楽しかった。これ一冊あれば、他の整理整頓の本は処分
してもいいかもしれない。