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マイナス・ゼロ 広瀬正・小説全集・1 (広瀬正・小説全集) (集英社文庫)

価格: ¥800
カテゴリ: 文庫
ブランド: 集英社
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この本の”現代”は昭和38年である。タイムマシン物の基礎知識 ★★★★☆
この本の”現代”は昭和38年(1963年)である。
昭和20年(1945年)東京大空襲が始まっていた5月のある日から、タイムマシンは飛んできた。
だから、現代の平成22年(2010年)の読者は、すべて「むかしはこうだったんだ」という
高見から小説を読めて楽しい。

タイムマシン物のすべてのアイデアが入っていると言っても過言ではないこの小説を
基礎知識として読んでおくのは悪くない。
盛り上がりには欠けますが・・・ ★★★☆☆
どちらかと言えば、男性好みの内容である。
興味深い過去のデータ(物価や町並み、事実)がキチンと調べられていて
知識としても面白い
戦前と戦後の銀座の様子や生活様式や、自動車や戦闘機の形式や材料も
事細かに記載してあるのでオタク性を求める読者は飽きることがないだろう

この物語は、タイムマシンを積極的に利用する話ではない。偶然、タイムマシンに乗せられてしまった登場人物たちが、
過去や未来で何とか生き抜こうとする姿を描いているのである。
全然、かっこよくないし、アドベンチャー性は少ない。
時々、時間のパラドックスに陥りながらも、妙にリアリティのある物語だった
普通に面白いです ★★★★☆
SF小説を読みなれた人には少し物足りないかもしれません。私自身は、それほどSFを読んでいませんが、それでも途中で何となく見通しがついてしまいました。
ただ、それだけが本作の魅力ではないと思います。時代ごとの風俗描写などは楽しいですし、それぞれの時代を誠実に生きた人びとの姿には、ある種の感慨を覚えます。
記憶では、戦時中のラジオ番組のところで、村岡花子さんという名前が出てきたと思いますが、この人は実在の人で、後に『赤毛のアン』を日本で最初に翻訳した人です(邦題も彼女がつけました)。
愛を感じさせる、日本のSFの傑作です ★★★★★
最初に読んだのは、広瀬正氏が亡くなった直後でした。それから40年近く経ちますが、常に私の愛読書のベストにありました。日本のSF長編の中で、これに匹敵する長編と言えば、小松左京氏の「果てしなき流れの果てに」と思っています。もちろん内容は異なりますが。
何度繰り返し読んでも陳腐化しない、広瀬氏の構想力、そしてそれを支える緻密な時代考証には頭が下がります。

私はこの小説の中に流れる「愛」を感じました。
未読の方がいらっしゃるので詳細は避けますが、戦争当時中学生であった主人公が、隣の家に住んでいた高校生の伊澤啓子さんに初恋をする。
ところが、東京大空襲の後から啓子さんは行方不明になってしまう。主人公は啓子さんのことが忘れられず、戦後18年を経て30歳を過ぎても独身である。そして、18年のブランクを経てその恋を実らせることができる。しかし、それもつかの間で、タイムトラベルと戦争という時代の奔流に流され、二人は引き裂かれる。主人公にとっては、中年としての2度目の戦後となり、啓子さんの面影がある映画女優と結婚し、子供もできる。ただ、主人公には何か忘れてきたもの・満たされない気持が残っている。
そしてそのときがやってくる。そのとき主人公の愛が、ある完璧な形で満たされていたことがわかる。
主人公は、戦後からそのときまでの18年間を二度体験するのですが、その間の一途な想い・切なさがこの作品の重要な背景をなしています。

是非一読を勧めます。そして広瀬正ワールドを堪能してください。
タイムトラベルものとしての楽しさもさることながら、昭和の人情噺的要素が好ましい ★★★★☆
 昭和20年、東京大空襲のさなかに浜田俊夫少年は息絶えようとする隣人の伊沢先生から不思議な頼みごとをされる。昭和38年のこの日にこの同じ場所へ来るようにと。
 18年後、成人した俊夫は約束を果たすべく同じ場所へやってくるが、そこに現れたのは伊沢先生が開発したタイムマシン。そして中から姿を現したのは…。

 昭和45年に発表された時間旅行SFということで、日本のSF文壇がまだ黎明期にあった時代の作品といえるでしょう。ですから物語は500頁を超えるとはいえ洗練されたタイムトラベルSF巨編というよりは、ユーモアあふれるファンタジーといった趣の作品です。

 俊夫は思わぬかたちで昭和7年という時代に放り出されてしまいますが、作者・広瀬正は徹底的に過去の資料にあたったとみえ、当時の社会状況や街並みなどを事細かに再現してみせます。時代の空気までふくめて綿密に描く腕はなかなかのものです。
 白木屋火災の場面では小学1年生だった自分自身を物語の中にちゃっかり登場させるなどお茶目な筆遣いがほほえましく感じます。
 NHKラジオで昭和7年にすでに「カレント・トピックス」という英語時事ニュース番組が放送されていたという記述があります。私が昭和50年当時、英語の勉強のため毎週末聴いていた番組が戦前から続いていたものだと初めて知り、驚きました。

 タイムトラベルSFはタイムパラドックスをいかに読者が納得できる形で収束させられるかがカギですが、この物語がそれに100%成功しているようにはみえませんでした。
 しかし、それでも今や世知辛くなってしまった平成の世から眺めると、昭和初期の隣人たちがゆったりした助け合いの精神にあふれた暮らしを営む姿が全編にあふれていて、それは大いに私の好むところです。その一点がこのSFを楽しい佳品にしている気がします。