また、企業への導入時など担当者はまずこの本を一読され、自社のシステムに当てはめてみて検討すると、PBX等との単純な連動だけでなく、いくつかの新しいアイデアへの応用も思いつくかとも考えられます。監訳も多く記載されており、英語版が出版されてからの翻訳されるまでの時間を可能な限り埋めようとしている為、今現在の動向を追うのにも助かりました。
ただし、プロトコル自体の詳細などについては割愛されているので、詳細に知りたい場合には、RFCを参!照する必要がありますが、本書籍を選ぶにあたり特に短所となるべきところではないと思います。
また、SIP自体IETFにてまだ検討中のものが多くあり、製品としてリリースされている概念や仕組みが多くあるわけではない為、あくまで概念として読まなければならない話もあることに注意しなければならないとも思いますが、短所や実際には使われていない内容についてはその旨の記述もあり、大変良心的に編集されていると感じました。
全体として大変お勧めな本と思います。
今春から多くのプロバイダがサービスを開始する最中、技術屋にとっては希少な日本語訳であり、またこれから実際にこの手の新しい分野に関わろうとしている人にとっては、最低限VoIPの青写真を描くことができるという意味で、本書は価格的にも時間的も決して高くない投資ではなかろうかと思います。
広い範囲を扱っているため、どこまでがSIPの範囲なのかを見失ってしまいそうになるくらいです。
しかし「セッションを開始する為プロトコル詳細」というつまらない解説よりは、「何にどのように利用され、どんな事が出来るのか」に焦点を当てた本書の方が、SIPの理解には役立つ事でしょう。
既にIP Telephonyやマルチキャストに関わる人が、SIPに対する理解を深める為には本書は非常に優良です。
知識や経験を持たない読者が、本書で解説されているSIPを通じてIP Telephonyやマルチキャスト技術への入門をはかる場合には少々敷居が高いかもしれません。
しかし、関連技術の紹介も多数あるので学習の道標としては優れています。
また、随所に見られる監訳注は、原書と本書の時間差、海外と日本の技術差を埋め、難しい記述を分かりやすく解説しています。
ただの訳本では無いという点は非常にポイントが高いです。