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現代建築・テロ以前/以後

価格: ¥2,520
カテゴリ: 単行本
ブランド: 青土社
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   80年代後半から建築を対象とする批評にとり組んできた著者の論文集である。特に本書には議論を呼んだ「ユニット派批判」および「反フラット論」が含まれており、その点で注目に値する。

 「死」「欲望」「廃墟」「崩壊」といった特徴的なキー・イメージを駆使しながら行われる都市と建築の症候分析、これが本書の通奏低音である。オーソドックスな分析的建築批評を徹底して迂回しつつ、建築の表象的イメージの水準において議論は展開する。地下鉄サリン事件や9.11のWTC崩壊のような都市に対する「テロ」、阪神大震災のような「災害」、「アウシュビッツ」、「ヒロシマ」、こうした事件に執拗に言及しながら、著者はフロイトの夢分析の手つきで、建築の背後に潜む深層心理を探り、都市の無意識の構造を叙述する。時にそれはある種の都市伝説の様相を帯びるのだが、屈折を繰り返しつつ紡がれるそのモノガタリには独特の感触がある。

 「ユニット派批判」「反フラット論」においても意識している水準はこれとかわらない。しかしかつての著者の評論文が結局のところ具体的な建築に対するある種の解釈であったのに対して、この2つの論文は最近の若手建築家の姿勢を批判することに踏み出している。発表当時、建築の批評としては珍しく大きな反応があり、これに対するさまざまな論評が現れた。批判が現実を捕えていないとする反論は一方にあったが、この論文に共感しその批判を支持する反応も少なくなかった。表象論的な枠組みで行われる批評にはどこかで聞いたことがあるような通俗なモノガタリに流される傾向があるが、しかし反応の大きさから見る限りなにかしら漠然と意識されていながらもこれまで言葉にならなかったポイントをこの批判が突いていることは確かだろう。その後論争として徹底されなかったがために、このポイントについて議論が尽くされたとは言いがたい。宙吊りにされたこの問題意識はいったいどのようなリアリティーの水準に位置するのか、1冊の本としてまとめられたこれらの論考をあらためて通読してみると、バブル以降動揺する建築と建築家、そして都市が抱えた問題へ接近する糸口を感じる。(日埜直彦)