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ボケてたまるか!―痴呆は自分で防ぐ家族で治す 二万七千人の治療実績が証明する浜松方式の成果 (角川文庫)

価格: ¥580
カテゴリ: 文庫
ブランド: 角川書店
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ボケは「自業自得」なのか ★☆☆☆☆
 「若い頃から勉強や仕事はできたかもしれないが、音楽にも絵画にもスポーツにも感動せず、碁も将棋 もトランプもしたことがない」「決まって親友や異性の友達もいないし好奇心も少ない、精神的にゆとりが なく人生を楽しむということもないヘンクツ、出不精、遊び知らず」
 
 これらが序文から一部引用したボケる人の特徴だそうです。そして本人のみならず家族もみんな自己中心的で非協力的な連中ばかりだからなお悪いのだと言いきります。もちろん著者が実際に多くの患者と接してきて実感しているのだろうし、私自身もそういう人はたしかにボケやすいのだという意見には納得することが出来ます。

 しかし、私には本書におけるこうした物言いが単に事実を述べるという以上に、痴呆になりやすいタイプの人間に対する蔑視やヘイトすら漂っているように感じられ(上記では「決まって」なんて言い方してますし)読んでいて非常に不快な気分になりました。 逆に、自分がいかに感受性に富んで、好奇心いっぱいで生きているかを対比で語るのも少々鼻につきます。
 私が一番問題と感じるのは、「AだからB(○○な人間だとボケやすい)」というにとどまらず「BだからA(ボケたということは○○な人間なのだ)」とまで完全に決めつけていることが伺える著者のスタンスです。聴き手が該当者の外(他人の例を教訓にしてこれから気をつけるべき立場)にいると発言者の傲慢さには気付きにくいものですが、例えばこうした例を痴呆以外にも他の病気や人間の傾向付けをされやすい話題(喫煙・出身・学歴・体型・血液型その他色々)に当てはめて考えてみてください。

 そもそもこうした生き方の違いは全てが本人の心がけの問題と言い切れるのでしょうか。私などは恵まれた戦後世代ですから子供の頃から趣味を持ちそれに没頭できる程度には経済的および精神的余裕がありましたが、現在定年を迎えている終戦直後あるいは戦前生まれの世代では、生きるだけで精一杯という子供時代を過ごし、大人になっても自分の幸せうんぬんよりひたすら「家族のため」といった気持ちで目の前の仕事に邁進してきた方も多いでしょう。実際定年を迎えたとたん生きる目的や目標を見失う熟年世代の問題などがしょっちゅう報道されているわけですが、それらを一方的に本人および周囲の人間が自ら蒔いた種なのだと徹底して「自業自得」を突きつける態度に世代は違えども疑問を抱かずにはおれません。
 
 ボケは自分が変わることにより自分で治すのであり、そのためには家族の協力も不可欠なのはわかります。 今までの生き方を見つめ直し根本から改めることがどれほど重要でしかし高齢者にとって困難かも理解します。しかし痴呆になった、あるいはその気がある人に対し、彼らがみんな貧しい感性であり、その家族も人間的に冷たくユーモアもない人間ばかりなのだと、これまでの当人の生き方のみならずその家族までもを頭ごなしに全否定するような物言いをされたら、心当たりのない当人および家族にはとても素直に受け入れがたいのではないでしょうか。「それは本人達が自覚してないだけだ」と著者はおそらく考えてらっしゃるのでしょうけど、本書の語り口を読む限り、私はこの著者自身にユーモアや思いやり、他人を尊重する心などを感じることができません。陳腐なたとえで申し訳ないですが、学校教育でも罵倒に近い叱責によって伸びる生徒もいればその逆に強い自己否定に捕らわれつぶれてしまう生徒もいるわけで、もう少し柔軟なアプローチは意識できないものでしょうか。 皮肉と承知であえて言わせて頂きますが、知性感受性はともかく他人の言葉に耳を貸さず独り善がりで鈍感力旺盛で生きている人間ならば、確かにストレスとも痴呆とも無縁なのだろうなと本書を読んでつくづく思いました。

 ちなみに私は、物忘れが目立つようになった友人の親(とても皆に好かれ人当たりのよい優しくて気配りのある方です)がこの先生の噂を知り本書を買ったあと実際にカウンセリングを受けに行ったはいいが、その後大変落ち込んでしまった(理由は上記より察して下さい)という話を聞き、試しに借りて読んでみた次第です。
ボケの認識を変える! ★★★★★
母親の物忘れがひどくなってきたので専門病院で診察してもらったらアルツハイマーの初期症状とのこと。アルツハイマーは進行を遅らせるのがせいぜいで回復することはできないという一般論に悲観的になってしまいましたが、この本を読んだら、本人や周囲の努力しだいで老人のボケ症状はまだまだ回復できるのではと楽観的な気持ちになりました。できれば、浜松方式の治療をしてくれる全国病院リストなどもあるとありがたいのですが……。