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法隆寺とパルテノン―西洋美術史の眼で見た、新・古寺巡礼

価格: ¥1,890
カテゴリ: 単行本
ブランド: 祥伝社
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   西洋美術史を専門とする著者が、奈良・京都の国宝美術について解説した1冊。古代ギリシャからルネッサンス期までの西洋美術と日本の美術を対比させながら、建築物や彫像、絵画などについて著者なりの意見が示されている。

   本書で紹介されている美術品の数々は、いずれも著者が「世界的レベルで一級品である」と判断したものばかりで、必ずしも一般には知られているものばかりではないが、その完成度・表現力には目を見張るものがある。著者の解説とともに美術品を見ていけば、日本美術の新たな魅力を発見できるだろう。

   本書のユニークなところは、ありがちな「古寺巡礼」ものと違い、あくまでグローバルな視座で日本美術の価値が論じられているところだ。パルテノン神殿、サン・ピエトロ大聖堂、法隆寺を「世界三大宗教空間」であり、「不思議と似た空間を感じ」ると論じてみたり、古代ギリシャと日本のアルカイズムを比較したりと、新鮮な切り口が提供されている。また、ギリシャ神殿の柱が円柱でかつパルメットを冠していることから「基本的に木でつくりたかったものをやむをえず石でつくった」と述べるなど、著者ならではの視点もおもしろい。

   著者は「あとがき」で、「世界の中で日本ほど、その内容のすばらしさに比して知られていない国はない」と嘆いている。同じく世界的な美を有するフランスやイタリア、イギリスに比べ、約10分の1の年間400万人しか観光客が来ない現実を挙げながら、とりわけ奈良が過小評価されていることを強調している。日本の美を見直すためにも、ぜひ一読したい1冊である。(土井英司)