漂流者の予言
★★★★☆
著者は海外を10年以上旅した人物。
その帰国後に見た祖国の世相を異邦人として眺めながら綴ったエッセイです。
元々80年代に出版されたものですが、今読んでも全く古さを感じさせない斬新な切り口で世相に切り込んでいます。
今から30年近く前に資本主義の欺瞞、アメリカからの圧力を受けての官民上げての消費の扇動、競争の激化による互助の崩壊、その予兆となる事件など、まるで現在の世相を予言するかのようで驚かされました。
特に、著者がある圧力で断筆することになった連載エッセイの中で、周囲の疎外が呪詛になって実際に「悪霊」を呼び込み、それに憑かれた男が鬼になるシーンには衝撃を受けました。
まるで黒塚の鬼女を思わせるような男の激しい憎悪と悲哀。
そこには現在頻発する無差別殺害事件の萌芽が息づいているように感じました。
クセのある文章はとっつきにくい所もありますが、研ぎ澄まされた筆は鋭く、引き込まれ、読了まであっという間でした。
病める日本社会の解体新書
★★★★★
狂い始めた日本社会。なぜ日本社会はおかしくなったのか。
「臭いものは日常の裏で秘密裏に進行させようというシステムが
暗黙のうちにできあがっている」(豚は夜運べ)
それを鋭利な文章と写真で、
むりやりひっぺがし、化けの皮のはがしたのが、この東京漂流だ。
「生が見えないと死が見えない」
日本社会が病んでいく原因を、
生死を隠し、社会をソフトケートしていったことにあると考え、
ニンゲンを食らう犬を世に解き放った。
そのインパクトたるや相当なものだっただろう。
現代日本を考える上で、
一つの金字塔を打ち立てた作品です。
ぜひ一度読んでみるとよいと思います。
病める日本社会の解体新書
★★★★★
狂い始めた日本社会。なぜ日本社会はおかしくなったのか。
「臭いものは日常の裏で秘密裏に進行させようというシステムが
暗黙のうちにできあがっている」(豚は夜運べ)
それを鋭利な文章と写真で、
むりやりひっぺがし、化けの皮のはがしたのが、この東京漂流だ。
「生が見えないと死が見えない」
日本社会が病んでいく原因を、
生死を隠し、社会をソフトケートしていったことにあると考え、
ニンゲンを食らう犬を世に解き放った。
そのインパクトたるや相当なものだっただろう。
現代日本を考える上で、
一つの金字塔を打ち立てた作品です。
ぜひ一度読んでみるとよいと思います。
・・・
★★★★★
1980年代、バブルに浮かれる東京の裏側に隠された不毛を写し、描く一冊。文章主体だが挿入された約30枚の写真のインパクトは強い。秋川峡谷バスガイド死体遺棄や金属バット殺人などが特にそうだ。クライマックスはしばらく筆者がマスコミからほされる原因ともなった「犬に食われる人」のボツ決定顛末だ。それはサントリーオールドのCMポスターとして意図されたもので、試作品ではパンパンに膨れ上がった死体を狼のような野犬の群れが踵からかぶりついているという壮絶な写真の横に可愛い丸いウィスキーボトルが写っており、「悠久のガンジス、犬に食われる人、自由だなあ、インドという国は・・」というブラックユーモアかと疑うようなキャプションがついている。これがお茶の間にふさわしくないと考えるのは無理からぬ事だが、問題は経緯であって、そこで作者の九州人らしい気骨が示されていて好感がもてる。使われなかったとはいえ、いや、むしろそれだけにこのポスター一見の価値あります。
・・・
★★★★★
1980年代、バブルに浮かれる東京の裏側に隠された不毛を写し、描く一冊。文章主体だが挿入された約30枚の写真のインパクトは強い。秋川峡谷バスガイド死体遺棄や金属バット殺人などが特にそうだ。クライマックスはしばらく筆者がマスコミからほされる原因ともなった「犬に食われる人」のボツ決定顛末だ。それはサントリーオールドのCMポスターとして意図されたもので、試作品ではパンパンに膨れ上がった死体を狼のような野犬の群れが踵からかぶりついているという壮絶な写真の横に可愛い丸いウィスキーボトルが写っており、「悠久のガンジス、犬に食われる人、自由だなあ、インドという国は・・」というブラックユーモアかと疑うようなキャプションがついている。これがお茶の間にふさわしくないと考えるのは無理からぬ事だが、問題は経緯であって、そこで作者の九州人らしい気骨が示されていて好感がもてる。使われなかったとはいえ、いや、むしろそれだけにこのポスター一見の価値あります。