「なんて素晴らしいの!」
★★★★☆
無謀な綱渡りをして警察に捕まったあと、彼は多くの人から同じ質問を浴びせられます。
「なぜ、こんなことをしたんだ?」と。
彼は答えます。「理由なんか、ない。」と。 (それが彼の人生だから。)
一言で言えば、“ロマン”なんですね。
一見して「アホじゃないか」と思えるような行為も、いざ綱をわたる姿を見ていると、荘厳で神聖ささえ感じられて、たまらなくロマンティックです。
月並みな表現ですが、人間が命を掛けて何かに挑戦する姿は、本当に素晴らしいから。
主人公の身勝手さに共感がついていけませんでした・・・・
★★★☆☆
刺激がないとやっていけない人というのがいて、厄介である。刺激といっても大から小まであるのだが、犯罪に手をそめてまで、あるいは自分の生命をリスクにかけてまで、強烈な刺激を求め続ける・・というのは、ある種の精神病質的な部分があると思われる。精神疾患と精神病質は違う。精神病質のほうは、見た目はまったく普通の人間に見える(普通以上に優秀で、才能があって、魅力的な人物に見える)のだが、脳波を測定すると、ヒトとは思えないような波形を記録するらしい。
精神病質(サイコパス)であること自体は、遺伝的なものであり本人が選択できる余地はなく、必ずしも悪いことをするわけではないが、本人は自分のそういう傾向をコントロールできず、自分の社会的、あるいは身体的な生命を危険に曝し続け、周囲の人々もその情熱に巻き込まれて、ケースによっては相当なダメージを被る・・という。こういう人が人口中に一定数、存在しているらしいから、みなさんも振り回されたり、むしられたり、消耗させられたりしないように気をつけましょう。
この映画の主人公もそういう「ひそかな情熱」を持って生まれてきたひとりらしい(主人公が精神病質だとは断言していないですからね。念のため)。ありあまる才能とエネルギーをもつ大道芸人で綱渡り師のフィリップ。映画は彼が犯した犯罪をめぐる複数の関係者の告白記である。
この映画のラストのラスト、主人公のモノローグだが、うろ覚えだけど、「刺激がないとやっていけない、刺激が失われれば反骨の精神は失われる・・」とかなんとか、彼の中では、自分がやっていること(綱渡り師としての野心を満たしたいために、何人もの人を一緒に犯罪に巻き込んだこと)は完全に正当化されているのだなぁとあっけにとられてしまった。ま、フィリップ的には捕まっても司法取引で、子供の前で大道芸を披露するだけで放免になったから全然オッケーなんでしょうけどね。
共犯者(フィリップと共にビルにワイアーを設営した一味)のひとりは国外追放にされ、フィリップの理解者であった妻とはこの壮大な計画を完遂したあとで、どういうわけか愛が破たんし(別れようと思った彼女の気持ちもなんとなくわかるような・・)。私の感想はあまりにもネガティブ過ぎるのかもしれないが、正直この映画を見て「こんな勝手な男やっていけん!」と思った。これはいけん。フィリップが才気溢れる魅力ある人物であるのは分かるが(若いころは可愛いのに年をとるとそうでもなくなるのが残念・・)、あまりにも身勝手すぎ。
アカデミー賞受賞作。
★★★★☆
この映画は、フィリップ・プティさんという綱渡り師のドキュメンタリー。
今は無きワールド・トレード・センターのツインタワーの間にワイヤーをかけて渡るまでの、
彼と協力者たちの紆余曲折を、
インタビューと再現VTRそして実際に当時撮られた映像をミックスして描いています。
フィリップ・プティさんという人の魅力と吸引力で、引き込まれてしまいました。
すごい子供みたいだし、自分勝手だし、不可解なほどの情熱なんだけど、
話しているのを聞いているだけで、ものすごく惹かれてしまいました。
インタビューとかしゃべっているのをずっと見ていたい感じ。
あんな大がかりで命がけの違法行為を手伝ってしまう気持ちもわかる。
けど、好きな人にはあんなことしてほしくないし、手伝いたくもないし。複雑。。。
最終目標であるWTCの成功シーンが、実際の写真を使っての静止画でしかないのが逆に印象的です。
信じられぬ人間の記録フィルム…
★★★★★
911テロにより今はなきワールドトレードセンターを命綱なしの綱渡りで渡った大道芸人の物語。
CGなどの特撮で驚きの映像も「本物の映像」にはかなわない。
本作には特殊効果やCGは一切ない。
生身の人間の記録である。
「ピアノレッスン」の作曲で有名なマイケル・ナイマンの過去のベストな曲を集めたサウンドにのり、物語は淡々と限りない高みへと登っていく。
「綱渡りをしているだけじゃない」
と言えばそれまでだが、「不可能へ向かって挑戦し続ける人物」を観ることは心地よい。
主人公と一緒に、空の上の綱渡りを体験できることだろう。