ニュートン力学から量子論へ
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科学の中心を成す理論や天文、事象の一テーマを取り上げ、効果的なイラストと
合わせて平易な解説で、テーマに興味を持った読者が肩肘張らずに科学することを
助けるNewton別冊。
奇しくもニュートン力学という古典論では説明がつかないミクロな世界の現象を
解き明かす理論である量子論が本書で扱っているテーマです。
本書は6章立てで、ムックの特徴ともいえる理解を促進するのに効果的なイラストを
盛り込みながら、理論の核となる「波と粒子の二面性」や「宇宙誕生の仮説」などを
導入部に、そして、「歴史的に見た量子論の誕生の必然」や干渉実験より導かれる
「電子の状態の共存」の解説、そして量子論により明らかにされた種々の現象などに
触れながら展開されます。
終章では、相対性理論で知られるアインシュタインの量子論との関わりと、彼が
投げかけた量子論に対する疑問について、現代的な解釈も加えながら考察し、
量子論のより深い部分について学ぶことができるようになっています。
本書は量子力学などを学んだ上で更に量子論的立場からミクロな現象を概念的に
捉え直してみたい方などにも有用だと思われます。
読者モニターの意見を反映した改訂版
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「量子論では、さまざまな状態が共存します」「量子論を考慮していない物理学のことを古典論(古典物理学)とよびますが、その意味では一般相対性理論も古典論なのです」。
2006年に出版された「量子論」の改訂版。読者モニターの意見を反映し、分かりにくいところの解説を加えたり、見やすく美しいデザインにしているということだ。
量子論は、相対性理論と並んで、20世紀物理に生まれたもっとも重要な物理理論のひとつである。しかし、マクロレベルの世界の常識と大きく異なる世界であるために、直感的に理解しづらい。本書は、読者がこの障害を乗り越え、さらに一層関心を高めることができるように、様々な工夫が凝らされている。
具体的には、Newtonらしいきれいなイラストを駆使しながら、平易な解説をうまくちりばめ、トピックを絞り、実世界での事象を使った比喩を用いた解説も取り入れ、あちこちで同じ事象に対して少し違う角度からの解説を登場させ、さらに詳しく知りたい読者のために式の解説を囲みにして加え、表紙裏や各章の最後のページでは要点のおさらいができるようになっている。
光が波と粒子の2面性を持つこと、電子などの物質粒子も波動性を持つこと、コペンハーゲン解釈、ハイゼンベルグの不確定性関係。有名な「シュレディンガーのネコ」も登場する。さらには、真空と量子論の関係、トンネル効果、化学との関係、量子コンピュータについての考察、自然界の4つの力、相対性理論との関係と融合への道。
個人的には、真空エネルギーとダークエネルギーの関係の可能性についての説明やカシミール力の解説、太陽の核融合が1500万度という比較的低温で実現しているのはトンネル効果がかかわっているからだという解説が、特に面白く読めた。
多世界解釈の説明、わかりやすい量子論発展史の年表や主要な科学者の紹介欄、量子論の発展とアインシュタインとの関係に焦点を当てた解説もある。