クピドの悪戯シリーズで最もエグい能力
★★★★★
■概評
見た女性が、主人公の虜になる。
そんな夢のような痣を持つ主人公と、主人公を取り巻く女性たちの話を描いた「このSを、見よ!」3巻。
個人的にはこの作品は「クピドの悪戯」シリーズで、ある意味最もエグい能力を描いているなと思います。
好きな女性を虜に出来る代わりに、純愛出来る権利を失う。そんな能力に翻弄される主人公の描写は圧巻。
■ストーリー
スティグマに罹患した患者が増える一方で(笑)、本心から自分を好きになってくれる人間がいないことに気付く主人公。
いい感じに心が寒くなる北崎節は顕在。
スティグマの能力を上手く利用しようと画策する女性、未だ本心の掴みづらい憧れの人、
主人公を大事に想う幼馴染など、様々な女性の思惑が絡み合う容赦の無い展開は、先を読ませず非常に読み応えがあります。
■登場人物
一癖も二癖もある人物が多いですが、それぞれの行動理念がしっかりとしているのは割と好感。
今巻で焦点を当てられているのは崇子ですが、全てビジネスに収束している様はいっそ清々しい。
■作画
表情一つで心情を現す上手さは変わらず。
登場人物の綺麗な面も醜い面もしっかり表現されています。
■その他
「虹玉」が「女性を確実に妊娠させる」という生殖に関して非常に有効な能力だったことや、
スティグマの特性を鑑みるに、この能力も生殖に何らかの影響を与えるものだというのは間違いなさそうですが。
ただまあ主人公の現状を見るに、この能力で女性は生殖に対して積極的になる一方で、痣持ちは消極的になりそうな気も。
「自分を本心から愛してくれるパートナーを選別する能力」と仮定すると納得は出来ますが。
■総括
スティグマの能力の秘密や、千鶴の本心が少しずつ明らかになっていく過程は見物。
能力が能力だけにそれを取り巻く緊張感や、主人公の重厚な心情描写は読者を強く引き込みます。
もし未読でこのレビューを目にすることがあれば、是非「クピドの悪戯」シリーズを手に取ることをお勧めします。