ガンプ氏にリアリティを求める人はいないでしょう。
これも駅伝を題材にした寓話です。

経済のグローバル化の中で、企業スポーツは
縮小一本やり。「家族的経営」で一時代を築
いたはずの日本の変貌が柔らかくも真摯に描かれます。
ラストで観客が極上のファンタジーの中にいたことが
伝えられます。

失われてしまった新緑の野原をわたる風のように。
いつ終ってしまったかわからない日本のある時代への
鎮魂歌であります。

本作のテーマは面白い。大学の陸上部のライバル２人と女性マネージャーとの三角関係。３人とも卒業後には別々の道を歩むが、走ることが忘れられず、実業団駅伝で再び違う企業のアンカー同士として覇を競う。ひとりは企業の広告塔にもなっているエース、もうひとりは潰れそうな企業の無くなりそうな寄せ集め駅伝部として・・・。感動を呼ぶにはもってこいのストーリーである。でも最後までしっくりこなかったのは、これらの大風呂敷を広げておいてまとめられなかった脚本に原因があると思う。伊藤高史は近作（舞台版・風が強く吹いている）にも出演しており、本作で開眼したようだが（笑）、中村俊介はエースらしい描かれ方が足りなかったし、田中麗奈演じるさおりとの結婚話も唐突。伊藤に恋する野波麻帆の役柄も、食堂の係員というよりも大学陸上部のマネージャーみたいだった。麗奈はまだ「がんばっていきまっしょい」や「はつ恋」で売り出し中の頃であり、初々しい感じがいい（笑）。女優ふたりは当時から安心して観ていられるが、男優ふたりの存在感が薄かったのも辛かった。伊藤が所属する造船会社は、傾いているとはいえ大手企業の設定だ。その企業が、経営難から１年前に解散させた駅伝部を「熱意」で復活させるだけの説得力も弱く、いつの間にか復活してしまって・・・。それから何よりレースシーンに迫力がないのが欠点だ。まあ２０００年製作の作品なので、若かりし頃の主演陣を観るにはいいかもしれない（笑）。特典映像はメイキングと舞台挨拶が収録されている。星３つ。

物語としての流れは、それはそれでよしっ！何しろスマート走りの俊くんがかっこいい。さすがに、現実・本人自我自賛のスポーツマン。元陸上部！！(と言っても、短距離でしたね)皮靴・ワイシャツ姿走りも、ランテック陸上部走りも惚れ惚れ　ロッカールームでの電話・医師からの宣告・プロポーズ・壮介に「走らないか？」と言った時の切ない表情が・・・いいっ！「切なさ」を伝える俳優は、俊くん、一番！　ごめんなさいおもいっきりの俊くんファンでしたっ！まぁ、それもありでしょう？　

壮介の前向きな姿と医学生さおりの気の強い性格によってやる気のなかった社員たちをやる気にさせ、関東大会出場まで導く。
予定調和的なストーリーだがその予定調和を楽しむのがこの作品。
その予定調和を楽しんでいるとちょっと意外なラストに感動する。

駅伝という地味ながら、深いスポーツを描いた作品。
スポコン物では最高の出来だと思います。

正月の箱根駅伝を観る方は、是非ご覧下さい。
駅伝がもっと好きになると思います。

田中麗奈の出番は少ないものの、大満足の作品です。