幕末の会津藩を知る重要史料
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文久年間から慶応末期に於ける京都守護職時代の会津藩を知るうえでの重要史料であり、また幕末政治史における「一会桑勢力」の政治行動を理解する為の基礎文献でもある。
作者は京都守護職で公用方も勤め、露西亜に於ける外交交渉を勤めた、会津藩家老山川浩であるが、実際の作者は弟で、フロックコートの乃木将軍とも言われた山川健次郎とも言われている。
当時の会津藩が、京都守護職に就任するまでの経緯や、守護職時代の政治的動向、特に初期は過激浪士達の言動にも耳を傾けていたが、彼らが先鋭化するに従って弾圧を始めた事。又、孝明天皇の信任が厚かった事など書かれている。本来は巻頭に孝明天皇の宸翰(会津はなぜか御をつけて御宸翰としている)を出しているのだが、東洋文庫版は残念ながらはしょられている。これは発刊当時は皇国史観の真っ只中であり、あくまでも会津藩の政治的雪辱を晴らすという目的の為に、宸翰を最初に掲載することにより、会津の正当性を表示する為だという。
内容的には京都時代の会津は正義であった事を正当化させる文節ばかりであるが、当時の皇国史観が薩長贔屓を考えると止むを得ないであろう。京都の会津藩を知る上では、是非にでも読む事をお勧めする。
なお、口語体であるので読みやすい反面、史料的に難ありかという話もあるが、歴史家も東洋文庫版を基礎史料として使用しているので、問題はないと考える。