『Come to Me』で全米図書賞の最終選考に残ったエイミー・ブルームが描くこの小説は、重いテーマながらも明るさがあり、痛ましいながらもまるで実話かと思わせるような成長物語だ。
   主人公はぽっちゃりした女の子。ピンクの眼鏡は角度によって色が変わるが汚れたまま。安物雑貨店で「ヒースバー」を万引きする癖がある。名前はエリザベス・タウブ。人生でただ一つ確信が持てるのは、両親が、唯一の子どもである自分に無関心だということ。そんな彼女が自分に愛情と関心を注いでくれる人を探し求め、中学校の国語教師の腕に飛び込んでいくあたりから話は複雑になっていく。
   そしてエリザベスがハディ・レスターという素晴らしい男性に出会い、さわやかで、情熱的で、胸が苦しくなるような本物の愛を知るようになると、親友ミセス・ヒル（ほとんど目が見えない年配の黒人女性）さえ彼女を守ってあげられなくなる。
   ブルームはその研ぎ澄まされた筆致とゆるぎない感性によって、人の一生を形成するのに愛や欲望がいかに深い影響を与えるか教えてくれる。