こうした大胆な予測には、驚きや納得の一方で懐疑的な反応がつきものであるが、著者はそれを想定しながら、ウェルネス産業の中身や普及の根拠を力説している。
それによると、ウェルネス産業とは「疾病ビジネス」などと違い、健康増進や老化の遅延、病気の予防のための製品やサービスを提供するもので、すでにサプリメントやフィットネス・クラブ、健康食レストランなどがあり、今後発展するものとしては「ベジタリアン・バーガー」や「ウェルネス保険」などがあげられるという。さらにそれが「広範囲に普及する産業の5つの特徴」にあてはまること、人口の多いベビー・ブーマー世代が消費の担い手になること、バイオなどのテクノロジーの進化で大きな発展が見込まれることなどを述べている。
また著者は、米国人に多い過体重や病的な肥満、そしてそれに伴う不健康は、「肥満と栄養失調を生みつづける食品産業」と「病気を生み続ける医療業界」がもたらしていると厳しく追及し、米国にウェルネス革命が不可欠であると訴えている。食文化や肥満などの背景事情はやや異なるものの、食の安全への関心が高まっている日本にとって見逃せない指摘も多い。
さらに読者に対して、起業や投資など、さまざまな立場からウェルネス産業に参入するヒントを示している。富を築くには製造ではなく流通にかかわるべき、といった一連のアドバイスは示唆に富んでおり、この点に著者の真骨頂がうかがえる。
予測が的中するかは別にして、ウェルネスという領域を定め、ニーズを掘り起こす本書の視点は鋭く興味深い。新興産業のビジネス・チャンスのとらえ方も勉強になる。(棚上 勉)