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音楽から解き放たれるために
 ──21世紀のサウンド・リサイクル

価格: ¥1,995
カテゴリ: 単行本
ブランド: フィルムアート社
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良い本です。 ★★★★★
僕は音楽畑の人間ではないのでここに出てくる具体的な固有名詞の99%はわからない。それでも「音楽」がこれからどこに行こうとしているのかわかる……わかるといっても頭でわかるというよりある種の感覚として伝わってくる。音楽のように、サウンドのように。こういう本が読めてとても幸せです(少し大げさかも)。

彼の言う「サウンド」は、ほぼ「コモンズ」の概念に当てはまり、「音楽」は「音楽産業」と読み替えられます。本のタイトルを僕なりに言い換えるなら「音楽産業に囲い込まれていた音楽がテクノロジーによってそのくびきから解放され、原初のサウンド(コモンズ)に戻って行こうとしているけど、音楽にとっても、そしてそれに触れる我々にとっても歓迎すべき話だよね(音楽産業なんかなくても大丈夫だよ、ぜんぜん!)」という論です。

そうそうそれから、この本は編集デザイン(情報デザイン)の見本としても素晴らしいです。書き下ろしを含め全体の概要をつかみたければ大きめの文字で一段組で組まれた部分を読めばいいし、個別のアーティストに関する文章は二段組みの部分、個別のアルバムや作品は薄い地色の敷かれた三段組みのページを読めばいい。レコードジャケット以外はすべてテキストですが「ヴィジュアルな本」だとも言えます。

音楽はデジタルテクノロジーの洗礼を最初に受けたジャンルであり、そしてそれは今も変わらず現代文化の先頭を走る、いわば先行指標です。音楽に限らず、文化とテクノロジーの関係に興味のある人にお勧めします。
音楽のリサイクル ★★★★★
著者の原雅明氏の活動は,レーベル運営,レコードショップ経営,音楽に関する各種執筆,音楽雑誌発行など多岐に渡り,
電子音楽の分野だと知らない人はほぼいない人物。

その原雅明氏が,これまで現場で経験し感じたこと,アーティストや音楽業界で働く人々からくみ取った現場の気持ちを
「音楽のリサイクル」という切り口で文章に落とし込んだのが本書。

パッケージビジネスを中心とした音楽業界の閉塞感を克服するために,
音楽をパッケージで"ストック"するのではなく"シェア"し"リサイクル"することが大切というのが本書の問題意識。
往年のジャズプレイヤーと現代のビートミュージシャンとが普通にコラボし,
過去の音源を現代に蘇らせて人と音をリサイクルさせているLAのシーンを紹介しつつ,”音楽のリサイクル”の重要性を示している。

その問題意識は,
原雅明氏とCreative Commons Japanが日本で仕掛けたdublab企画LA発のプロジェクトの”INTO INFINITY”や
dublab製作で原雅明氏のレーベルから発売されるドキュメンタリー・フィルム"Secondhand Sureshots"と共通し,
原雅明氏は本書に込めた問題意識をアートプロジェクトとしても実践している。

本書は,音楽業界の閉塞感の原因を掘り下げつつも,音楽に対する愛情に支えられたポジティブなメッセージが込められている。
”音楽のリサイクル”はこれからの音楽業界再生のキーワードになるといっても過言ではない。