本書は日本会計研究学会で活躍されている田中教授の論集で、「会計という視点から素顔のアメリカ、日本の真実を伝えることを目的」に書かれたものです。第一章「アメリカ会計の錬金術」から第5章「不思議の国の時価会計」まで、論点は多岐にわたっています。「V字回復の会計テクニック」(P.44)などは、世上名高いN自動車G氏のやり方を痛切に批判したものとも理解できます。もっとも世の中ではG氏を高く評価しているわけですから、本書は異端扱いになるかも知れませんね。また第2章「ギャンブラ-のためのアメリカ会計」などは読み物としても面白いと思います。総じて「素顔のアメリカ」「日本の真実」について重要な指摘をしていると思いました。(但し企業会計原則の歴史的な役割について否定的な著者の見解には若干反対です。戦後企業会計原則の作成・制度の定着などに貢献された故黒澤清教授や故山下勝治教授などの貢献を思い出してもらいたいものです。)
デフレ下での時価会計と日本経済への影響という重要な論点を含んでいますから、会計学を学んだことの無い人にも是非一読してもらいたいと思います。また著者は時価会計以外でも通説に対して様々な角度から議論を展開しております。是非他の著作も読まれると良いでしょう。