大正時代、日本とアメリカの海軍軍人が育んだ交遊と、その後の数奇な運命を辿る戦記外伝の短編。

山本五十六（1884–1943）は海軍兵学校からキャリアを積み重ね、連合艦隊司令長官にまで上り詰めた。少年時代、教会に通い、アメリカ人宣教師に学んだ。ハーバード大学への留学経験もあり、アメリカを知悉し、アメリカに憧れる側面があった。

アメリカ人宣教師を父にもつアーサー・マッカラム（1898–1976）は長崎市で生まれ、中学時代まで日本で過ごした。その後、アメリカで海軍兵学校に入学し、軍人となった。

二人は1921年、東京で初めて出会う。山本は中佐、マッカラムは少尉で、駐日アメリカ大使館付の武官。年の差はあったが、マッカラムは山本を兄のように慕い、次第に二人の付き合いは深まっていく。1922年の夜、二人は帝国ホテルの一室でポーカーをしながら、ある約束を交わす。太平洋戦争開戦の謎に迫るスリリングな作品。