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だれがクラシックをだめにしたか

価格: ¥570
カテゴリ: 単行本
ブランド: 音楽之友社
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   刺激的な内容。いや、もしこの本に書かれていることがすべて本当だとしたら、衝撃的と言ってもいいだろう。クラシック音楽界の舞台裏を赤裸々に描いたノンフィクションである。

   著者はテレビ・ニュースのプロデューサーを経て、音楽ジャーナリストになったイギリス人で、『The Maestro Myth』(邦題『巨匠神話』)『The Companion to 20Th-Century Music』などの著書がある。本書によると、クラシック音楽業界は「金、名誉、権力」という欲望にとりつかれた人間たちが跋扈(ばっこ)するおどろおどろしい業界ということになる。著者は「この本は暴露本ではない」と記しているが、ここまで書いていいのかと心配になるほどの部分もあり、業界の影の部分をえぐるようなタッチになっている。ただし、単なるスキャンダラスな暴露本とは違い、確かな取材力に支えられた説得力がある。著者はクラシック音楽を心から愛するが故に、現状を憂いて書かざるを得なかったのだろう。

   第1章「セックスと嘘とヴィデオディスク」を読むだけで、海外からの著名な演奏家やオーケストラのコンサートに法外なお金を支払わされる理由が明かされる。巨万の富を築く大スターがどう作られるかについて書かれた第3章「スター・システムの誕生」は興味深い。フランツ・リストは、有能なマネージャーのベッローニとの二人三脚で、まさにメディア戦略を駆使して大成功した最初のスターだった。ハイネはこの熱狂ぶりをリストマニアと呼び、その人気の裏にある人工的なうさん臭さを感じとっていた。才能だけでは成功できないシステムはすでに19世紀半ばからあったのだ。

   そのほかにも、ナチとかかわっていたカラヤンの強権、パヴァロッティの堕落、レコード会社の拝金主義、レコードからCDへの変化による影響、バブル期の日本企業のクラシック業界への参入、ホモセクシュアリティ、存在悪としてのエージェント業…。あらゆる側面から斬り込んでいるので、飽きることなく2段組400ページ近い本著を読破してしまう。刊行後、欧米で物議を醸した問題作である。(齋藤聡海)