「大人の視点で世界を見る子供」
★★★★☆
フランソワーズ・サガンはあるインタヴューにおいて、こう語っている。
「私は周りに大人ばかりがいる環境で育った。そして、どこかの部分で、孤独を感じていた」
彼女の作品には、「愛」と同じくらいの「孤独」が常に漂っている。そういった小説家としての彼女の特性は、デビュー作にあたる「悲しみよこんにちは」においても強く感じることができる。
物語の大枠はシンプルなもので、母がおらず、父と娘二人だけの家庭に新たな母となる女性がやってくるというものだ。女性と数々のアバンチュールを繰り広げる父親と、その娘であるセシールは、フランスのリビエラで夏を過ごしていた。その海岸を舞台として話が進行し、観客は主にセシールの視点から事件を眺めて行くことになる。
自由奔放かつ意志の強いセシール役は、ゴダールの「勝手にしやがれ」にも出演したジーン・セバーグが抜擢された。彼女のボーイッシュな髪型は映画全体を通して印象的に写った。私は彼女が登場することを知らなかったこともあって、以前受けた驚きを再び感じさせられた。
そもそも作品の中で、セシールよりも年下の人間は登場しない。彼女は最も年下の「子供」であり、未熟な状態から大人の世界に半ば参加し、好奇心を持って見上げているのだ。その視点は不安定で危うく、決定的な事件を引き起こす原因となってしまうほどだった。
またインタヴューの話に戻るが、この映画についてのサガンの言葉があったので最後に添えておこうと思う。「映画化された自分の作品に、多くの作家は納得しないということですが、私の場合、特に『悲しみよこんにちは』はとてもよくできていると感じました。」