映画前半を物語の背景や人物を丁寧に描き、荒唐無稽なアメコミ世界に、現実味を加えようとする姿勢は好感を持てる。が、ハルクを早く見たい方にとっては、序盤はじれったい時間帯になりそう。少しご辛抱を。
待たせただけのことはあり、ハルクの超人ぶり暴れっぷりは満足できる迫力。しかし、物語には絶対悪に相当する存在がいないので、アクションシーンの攻防戦がメリハリに欠ける感も。辛うじてハルクの父親が、その役目を担うものの、親子喧嘩の怪物版という感じで終わってすっきりしない。
見終えて印象に残るのは、CGの出来の良い「緑の巨人」のハルクではなく、生身の魅力を放つ「美しい目」のジェニファー・コネリーだったのが少々寂しい。
内容としては、深みのある話になりうるのに惜しい!という感じです。ただのコミックではない、人間誰しも持っている負の感情(ただの暴力というより「力」そのもの)を描けたと思うのですが、消化不良ですね。魅せる映像と話の良さの両面が楽しめると良かったのですが。ただ映像だけは楽しめると思うます。
そして、ここ最近のCGでは抜群の出来栄えである迫力ある動きと、派手なアクションはするが決して人は傷つけないという、昨今のアメリカが罪を犯していることへの言い訳気味さというのを感じ、なにごとも理論的にことをすませようとする彼らの精神性の脆弱さを垣間見ることができあきれるばかりである。