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グリュフォンの卵 (ハヤカワ文庫SF)

価格: ¥945
カテゴリ: 文庫
ブランド: 早川書房
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小説的なアプローチが重要になってきた ★★★★★
 この短編集を読んで一番感じたのは、「なんてカジュアルなリアリティーのある小説なんだろう」ということだ。もともとSFはテクノロジーやファンタジーを中心とした夢物語だ。だから人間の日常的な営みはあまり語られることがなかったように思える。作り物のツルツル、ピカピカした綺麗さのある「未来的」イメージの映画やドラマのセットの中で物語が進んでいくようなものだ。しかし本作品では日常的な猥雑さのある社会の中で物語が進んでいく。SFが現実の延長になった、SFもここまで身近になったのかという思いだ。その代わりSFは人間を描写する、より小説的なアプローチが重要になってきたと言えるかもしれない。
 もちろんハードSF的な仕掛けも十分備えている。「死者の声」には感心した。全体を通して読み応えのある作品集だ。
やはり凄腕です ★★★★★
日本オリジナルのベスト短編集です。作者はデビュー当時から大変注目されていましたが、翻訳が少なく、あまり読んだことがありませんでした。しかし最近は毎年のように主要なSF賞の短編部門を授賞しており、とっても気になっていました。さてまとめて読んでみると、凄い腕前でした。60年代のニューウェーブのような実験感覚のある作家だと思いました。
映像化しやすそう ★★★★☆
収録短編の内容がバラエティに富んでおり、いずれもドラマティックで読んでて飽きない。若干アウトロー気味の人物が主人公となっているものが多いせいか、一抹の寂寥感を感じさせる。
私の場合、普段あまり頭の中に小説中の情景を思い浮かべないのだが、この短編集ではいずれも情景が強く浮かんだ。そのため映画を一本見たような読後感を得た。
強く印象に残る傑作はないが、それなりに楽しめる ★★★☆☆
収録作品は、『ギヌンガガップ』、『クロウ』、『犬はワンワンといった』、『グリュフォンの卵』、『世界の縁にて』、『スロー・ライフ』、『ウォールデン・スリー』、『ティラノザウルスのスケルツォ』、『死者の声』、『時の軍勢』の全10作。
表題作『グリュフォンの卵』の説明を読んでバリバリのハードSF短編集かと思ったが、さにあらず。色々と幅の広い作品集で、楽しめる人は多いはず。とりあげられているテーマも興味深く、どれもまずまず面白い。しかし、残念ながら強く印象に残る傑作はみつからず、期待しすぎるといけない。