橋本治の『虹のヲルゴオル』の

虹のヲルゴオル (講談社文庫)

第１２章　「生きていく準備をなさいな」で
この映画とジェーン・アリスンについて語られています。

婚約者がありながら「突然」グレン・ミラーと結婚してしまった
この行動は単なる衝動的なものでしかないのだろうか？

あるいは、この下手をすると良妻が駄目な夫を応援する物語に
なってしまうところが、台詞の中に「あなたには才能があるんだから
頑張って」といった言葉が一切出てこないのはどうしてなのか？

「あなたには、がっかりしたわ・・・」という事実を伝える
難しさについて。

夫であるグレン・ミラーが亡くなったあとで見せた
ジェーン・アリスンの笑顔とは？

・・・・・
感動が２倍になること請け合いです。

トロンボーン奏者だったグレンミラーが自分のスタイルの音楽を追求し、グレンミラー楽団を組むまでになる。
レコードも演奏会も大ヒットし彼のスタイルの音楽で大成功をおさめる。
やがて時代は第二次世界大戦へ突入、入隊したグレンはバンドを率いてヨーロッパへ渡る。
BBCのスタジオからヨーロッパに向けてのラジオの生放送、慰問先で「イン・ザ・ムード」を演奏中空襲警報が鳴りVロケットが近くに着弾するが演奏を止める事の無い勇敢さには頭が下がる。やがてパリへと向かうグレンは搭乗機が撃墜され戦死する。１２月２４日クリスマスのパリからの演奏は予定どうりグレンがいないまま放送される。曲はミラー夫人が好きだった「茶色の小瓶」である。

売れないトロンボーン奏者兼編曲者時代から、
後に妻になる大学時代の同級生ヘレンに
真珠のネックレスを送る経緯、'40年代の
バンドマン時代、独自の演奏スタイルを
貫くために、この当時珍しかった
自分のオーケストラを持つという試み、
戦争中に慰問演奏に乗り出したことや、
数々の名曲の生まれた秘話、
撮影当時の嬉しいカメオ出演として
L・アームストロングの演奏もなどが
盛り込まれ憧れのパリを前に亡くなった
姿を名優J.ステュワートが演じる姿が
すがすがしく、これがわずか500円で
手に入るというのはおすすめの一作である。