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宗教と道徳 (文春文庫)

価格: ¥580
カテゴリ: 文庫
ブランド: 文藝春秋
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せめてタイトルは「思うままに」にすべきだったろう ★★☆☆☆
梅原氏は哲学者として名を成していながら、歴史を中心に様々な謎に挑み新説を打ち出す変り種。"怨霊史観"の提唱者として知られる。また、仏教の造詣が深いので、この題名から宗教論の本かと思ったら、「思うままに」のタイトルで新聞連載したものを纏めたものの由。

さぞかし奇想と刺激に満ちた内容かと期待したら凡庸な出来。社会・政治問題に関する話や人物(主に政治家)論は"ありきたり"な物ばかり。あるいは逆に一人よがりで噴飯物のものも多い(将棋や恐竜など)。「水底の歌」や「隠された十字架」で見せた発想の飛躍が、エッセイを書く際には単なる独断に堕している。歴史の謎に対して斬新な説を案出するのは大歓迎なのだが、同じ手法を社会問題・人物論に適用すると無残な結果になってしまうのである。本書で一番驚いたのは、幼少の頃は数学が得意だったと堂々と書いてある事である。上記の代表作も論理的に結論を導いたのではなく、直観推理とも言うべき帰納法を用いているのだが、本人は演繹的だと勘違いしている。演繹法と帰納法の区別も付かないのに数学が得意とは...。本人を含めた身内の自慢話が多いのも鼻に突く。自己を客観的に評価する事ができない人だと改めて思った。縄文文化や怨霊を語る際などは筆運びが快調なのだから、題材を絞るべきだったろう。

「宗教と道徳」と言う題名には無理がある。せめて元の「思うままに」にして置けば、読む方もある程度仕方が無いと思ったのではないか。
タイトル買いの方は要注意 ★★★☆☆
梅原猛氏の著作で「宗教と道徳」というタイトルを見たら、日本独特の宗教感、近年の道徳観念の希薄化などの著述だろうと想像してしまうのは、決して私ばかりではないだろう。
ところが、本書は、東京新聞、中日新聞に連載されたエッセイで、その内容は殆どが日常生活や政治、社会への氏の眼差しである。全59編の小品のうち、道徳に関するエッセイといえるのは1編のみである。書店で内容を確認しておくべきであったと後悔したが仕方ない。
なぜ、このように名が体を現さないタイトルを許したのか甚だ疑問が残るが、氏の思索の基層を形成するものに興味がある方であれば、大した問題ではないのかも知れない