少年時代の経験から彼が学んだのは、ビジネスには「果物を売る小さな露店にも、フォーチュン紙のトップ500社に選ばれる大企業にも」当てはまる普遍の法則が存在すること、そしてその法則を理解することで培われた眼識はどんな事業にも通用するということだった。『What the Ceo Wants You to Know』は、そういった能力を身につけるための入門書であり、チャランは行商人や小さな商店の経営者たち特有の考え方を用いて、本書のテーマを例証する。
たとえば、ニカラグアのマナグアで出会った女性の話だ。小さな手押し車に衣類を乗せて売りさばいていた彼女は、借金の厳しい返済利子をものともせず、売れ残った在庫品から巧みに選びだした衣服にわずかばかりの利幅をもうけ、常に商品の回転率をよくして商いを繰り返していた。この話をもとに、露店商だろうと巨大企業だろうと「商品の流れが早ければ早いほど返ってくる報酬も大きい」とチャランは指摘する。さらに彼はこの考え方を、キャッシュフロー・ジェネレーション、顧客満足、その他のビジネス上の要素に当てはめながら、利益を上げる企業になるための普遍的な法則を描き出す。「企業の最高経営責任者が理想とするのは、これらの基本原則をビジネスに生かす手腕をもつ社員だ」と前置きしたチャランは、本書のテーマを明解な語り口で非常にわかりやすく説明している。