東京都庭園美術館での素敵な企画が本になりました
★★★★☆
本書は、2008年7月19日〜9月23日に東京目黒にある東京都庭園美術館で開催された「舟越桂 夏の邸宅―アール・デコ空間と彫刻、ドローイング、版画」展を編集して本にしたものです。
実際この展覧会を訪れた者ですから、展覧会終了後にこのような本となって再現されるとは思っていなかったので、これと出会った時は驚きました。
気品のある旧朝香宮邸の内部のアール・デコ調の室内装飾と舟越桂氏の性を超越したスフィンクスの一連の作品が実にマッチしていました。鹿鳴館時代を彷彿とするような優雅で華麗な室内とその不思議な彫刻が、時代を超えて展示されているわけですから、美術好きには堪えられない企画だったと高く評価しています。
観賞時には多くの観賞者が入場していたわけですが、本書では人のいない空間に舟越氏の作品がくっきりと浮んでいます。まさしく美術品の展示はかくあるべし、ということを提案しているかのようでした。まるで最初からこの空間を占拠しているように思えるほど存在感がありました。
舟越桂氏は、1997年に第18回平櫛田中賞を、2003年に第33回中原悌二郎賞本賞を受賞した人気と実力のある彫刻家です。巻末に本作に所収された作品リストのほか、舟越氏の略歴、主な個展、主なグループ展、パブリック・コレクション、欧文の解説等が載っていました。
東京都庭園美術館副館長の塩田純一氏による「彫刻と空間の対話‐『舟越桂 夏の邸宅』が意味するもの」という解説に、同展覧会の素晴らしさとその意味合いが書かれています。実際に観賞した者としては大変参考になりました。