軍事から見るヨーロッパ古代史
★★★★★
軍事強国スパルタをはじめとする古代ギリシャ、マケドニアのアレクサンダー大王、カルタゴのハンニバル将軍、ローマのジュリアス・シーザー(カエサル)。アレキメデスやクレオパトラ、ブルトゥスもしっかり出てくる。もちろん、ルビコン河の渡河などのエピソードも欠かさず紹介されている。
中心はあくまでも戦史である。軍隊の特徴や進歩、戦術、兵站、海軍、兵器。特に、アレクサンダーの軍隊や、国力を背景にしたローマの軍隊の強さの秘密が、本書の戦いぶりを通じて浮き彫りになる。見た目は薄いが、しっかり書かれていてかなり読み見ごたえがあった。地図や図は多いけれども全て白黒印刷なのでVisual的にはもうひとつだが、その分値段は抑えられている。
本書では、単に戦いに勝つだけでなく、その後の賞罰や統治の方法についても解説が行われている。個人的には、このような政治的な成功を伴ってこそ、戦争の勝利が強い意味を持つようになるものなのだなという印象を強く受けた。また、アレクサンダー大王の父であるフィリポスが、小国から大国になるための様々な布石を打ちながら息子に英才教育を施した部分の説明も、大国は一代にして成ったわけではなくきちんとした礎があったのだなということがよく分かったという点で印象に残った。
巻末に、人物と地名と合戦名の、日本語-英語対訳一覧があれば、尚良かったと思う。