崩壊家庭の家族たちが再び集う大団円、そして、、、ホームドラマの原型
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イタリア映画と言えば、ロベルト・ロッセリーニに端を発するイタリアン・レアリスモ。
ビスコンティ、フェリーニ、アントニオーニら巨匠・名匠・鬼才が居並ぶ中、
ピエトロ・ジェルミはビットリオ・デ・シーカとともに、俳優としてのキャリアも豊富な
大衆派の名監督である。
中でも「鉄道員」は最高傑作、「ブーベの恋人」のカルロ・ルスティケリ作曲による
哀切のギター曲とも相まって映画史に残る名作だ。
マルコッチ一家の長アンドレアは、運転士の誇りを胸に特急列車に乗務する鉄道員であるが、
家庭にあってはともすれば独善に陥りがち。
娘の妊娠、望まぬ結婚を機に一家は急速にバランスを失い崩壊寸前、アンドレア自身も
あわや事故寸前の運転トラブルを起こし特急運転士から外される。
誇りと自信の喪失から自暴自棄となり折からのストライキで「スト破り」を決行、
仕事仲間からも白眼視されて孤立を深め、深酒の挙句健康を損なう。
末の息子サンドリーノ少年は子供心に父を気遣うのだが、、、。
しかしやがてアンドレアの健康回復とともに一家に雪解けが訪れる。
クリスマスの夜、アンドレアの家に集まった人たちの輪に家を出いてた長男が加わり、
離婚寸前だった長女も夫とヨリを戻す。
大団円のあと、アンドレアは上機嫌で久々に得意のギターを手にし、、、。
名優ジェルミは勿論、夫を健気にかばう妻、ルイーザ・デッラ・ノーチェ、
サンドリーノ少年エドアルド・ネヴォラらの名演技が泣かせる。
正常化された不朽の名作
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DVDでやっと正常の状態でリリースされたという思いである。以前発売されたものは何故かヴィスタサイズの表示であった。中味を見たら、天地が切れた状態で名作を何という状態で出したのだろうと憤激したものだ。
内容はもはやいろいろな人が語っているので、重複を避けるが、人情の富んだ内容なのがよい。スト破りをして仲間と一緒になれない主人公が行き着けの酒場に姿を現すと主人がいいワインがある、開けようかと誘う。これはまた元通りに職場の仲間と打ち解けるための心遣いだ。こうした情のあるところが何とも魅力なのだと思う。もちろん、次男のあの小さな坊やも大きな魅力だ。
鉄道員デジタル・リマスター版
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名作とはこの作品を言うと思います。
初めて劇場で観たのは小学生の時で当時も感動したのを覚えてましたが
またまた感動してしまいました。
詩情を極めた演出
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戦後のイタリアの典型的な無産階級の家庭の姿を映し出した秀作。窮地に立たされ、酒びたりになっていくワンマンな父親に反発して家を離れていく長男と長女、そして家族の為に陰ながら尽くす慎ましい妻、クリスマスでの家族の再会などが素朴ながら人間愛の葛藤のなかに描かれている。なかでも家族の最後の絆でもあり、彼らの意思疎通を図るメッセンジャーの役割を果たす、明るく心の優しい末っ子、サンドロ役を演じたエドアルド・ネヴォラの演技は出色。ただネオ・レアリズモ的な社会派映画としては辛辣さに乏しく、鉄道員達のストライキのエピソードも体制批判というよりは、この作品へのアクセントに過ぎない。むしろ焦点を家族に向けた詩情的な側面が傑出した作品といえるだろう。1955年制作の白黒作品で、テーマ音楽はあまりにも有名。今回オリジナル・トレイラーをつけての再リリースで、リマスターされた画質は古い映画としては良好。
まるで日本のホームドラマ のようだ。泣ける。
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須賀敦子さんは、亡くなったご主人が鉄道員の息子さんで、夫の死後ずいぶん経ってからこの映画をみて、ショックだったとエッセイで書いておられます。それで私も見ました。イタリアの国鉄の官舎は、みな同じつくりで、主人公が帰宅して電気をつけるスイッチの位置が電気をつける前にわかった、舅も少し横になると言って息をひきとった、と。