1945年8月、太平洋戦争終戦によって、51年におよぶ日本の統治から解放された台湾。しかし、その喜びもつかの間、闇社会の進出や国民党の台頭など大陸との確執などにより、台湾は新たな受難の時代を迎えることになる…。
台湾映画界の名匠ホウ・シャオシェン監督の名を世界的に広めることになった歴史叙事詩映画の秀作。ヴェネツィア国際映画祭金獅子賞、金馬奨最優秀監督・主演男優(チェン・ソンヨン)賞、キネマ旬報ベスト・テン第1位など国の内外で数々の受賞に輝いている。ドラマは歴史の波に否応なく巻き込まれていくリン一家の面々を通しながら、時に非常に、時に情感豊かにつづられていく。その中で、耳が聞こえず口も聞けない四男ウンセイ(トニー・レオン)と看護婦ヒロミ(シン・シューウェン)の悲恋が印象的。(的田也寸志)
台湾に行く前に、九分に行った後に
★★★★★
ヴェネチア映画祭のグランプリ作品にレビューを書く失礼!をお許しください。
<玉音放送>から始まる映画でびっくりです。
日本の支配から「解放された」台湾に、228事件や、それに続く「白色テロ」の嵐が吹きすさびます。
戒厳令が解除されたばかりの台湾で、映画がよく創れたなあ!と驚きます。
先月(8月)「228記念館」は工事中で入ることは出来ませんでしたが、慰霊と平和を祈念するメッセージが壁に貼ってありました。
九分から見える基隆の港町は、また日本への引き揚げ船「高砂丸」の出港した港です。
「海角7号」の友子さんが「捨てられた」港です。
「海角7号」の監督の次回作のテーマは80年前の「霧社事件」で、「セーデックバレ」という標題です。
来年には公開が予定されていますが、どんな描き方がされるのか、ちょっとドキドキです。
この8月に台中から足を伸ばして山の中の小さな村、霧社を訪ねて来ました。
日本人は(人は)こんなにも残忍なことができるのか?と考えさせられる事件でもあります。
「抗日」の碑は立派なものが建っていました。
最初に殺された日本人の女・子供のお墓は、すっかり破壊され場所すら分からなくなっていました。
辛い事件ですが、忘れるわけには行かないです。
日本の警察と軍隊に殺された「抗日」の千人以上の先住民に、先住民に殺された134名の日本の子供達にも
手を合わせて来ました。
「霧社事件」、228、白色テロを経験して、それでも「親日」の人たちの沢山いる台湾です。
「非情城市」は台湾に旅する前に、そして帰国したら見る映画です。
存在意義ある素晴らしい作品
★★★★☆
いくつかの固定位置から撮ったカットを物語の軸としながら、台湾のいくつかの地方風景を時おり挿入しながらそこでの出来事を描くという手法で構成されています。2.28事件の悲人道さが主題ではなく、その出来事(歴史)に翻弄されながらも力強くまたは優しく生きるある家族の一時期の絆を抜き取っています。存在意義のある素晴らしい作品。音楽もいい。80年代のシャオシェン監督には天才が降臨している。
歴史の証人
★★★★★
この作品、その歴史的背景を正しく理解したとき、
その偉大さが清冽に印象付けられます。
淡々とした描写の中で起きる人類史上空前の悲劇虐殺。
この作品は、歴史の証人としてAAAの価値を有する。
史上空前の傑作と言えよう。
余談ながら、善悪については、言わぬが花と判断します。
激動の歴史を静かな人間描写に埋め込んだ作品
★★★★☆
台湾の歴史をあまりご存じない方はまず特典映像から
見てみましょう!監督インタビュー、地図からその土地の
説明、そして年表からその事件のチャプターへとぶ
ところなど工夫がされてます。
それから本編をご覧になれば、理解しやすくなるでしょう。
人間の誇りと欲が、現実に起きた事件でどう揺れ動くのか
この後どんなドラマがあったのか続きが見たくなる
作品です。
台湾と日本
★★★★☆
私の母は戦前台北市に住み、基隆港には海水浴に行っていた、というので母と二人で観ました。舞台となる酒屋のお宅は、台湾でも裕福な暮らしぶりだそうです。水牛が田を耕し、御葬式では啼き女が泣き行列をつくりお墓まで行くことなど、懐かしい習慣がたくさんでてきた、と母は感慨深げに観ていました。228事件で多くの知識人や若者が虐殺された事実は語られていません。トニー・レオンの演技は秀逸でひたむきに生きた内省人の姿をあらわしていると思います。食卓のシーンもよくでてきて、マージャンが娯楽であったことがよくわかります。昨年台北市を観光旅行し日本人街が残っていて、日本の影響が大きかったことを感じました。