日常の業務の見直しのための本。
★★★☆☆
建設業の新分野進出推進の第一人者である米田雅子氏が、編著者として、他の専門家の協力を得て、「建設業経営」について言及しようとした本である。「ようやく」という気がするのは私だけではあるまい。
同氏は、「はじめに」で、建設業の経営者が自社の経営を真正面から見直す為の本であると述べ、本編で、多数の共著者が原価管理・実行予算管理、業務フロー改善の方法など、日ごろの経営の仕方の改善を中心に指南している。確かに、多くの中小建設会社は、「経営」とは程遠く、ドンブリ勘定の運営しかできていない。本書は、それらの会社の経営者に、日常の経営管理の「ヒント」を与えてくれる。
ただ、個人的には、読後にすっきりした感覚は感じられなかった。その理由は2つある。一つは、些少なことだが、各章がオムニバスであり、全体の構成感や網羅感がないことである。これでは、読者は全体として「わかった」という気にはなれないだろう。
もう一つの理由であるが、著者たちは、「日常の業務の改善」を「本物の経営」であると理解しているのだろうか? 彼らが扱っているのは、「経営管理」に近い。本書では、事業理念、顧客満足、社員を活かす等、経営の本質的な側面がほとんど扱われていないか、記述されていても深みが感じられない。
もちろん、読者は、このような限界を踏まえた上で読めば、価値ある良書であることに間違いない。