しかし、前半部の検証からは、著者の主張は導き出せないように思われる。政策過誤の原因が、著者の言うような歴史への無知ではなく、為政者の先験的・経験的な偏見・先入見やイデオロギーにあるのではないか、と考えさせられるのだ。だとすれば、たとえ歴史政策学なるものが成立していたとしても、この問題が解決されなければ政策の過誤は避けられないだろう。ましてや歴史政策学者自身が同じ足枷にとらわれていないとは限らないのだから。
とはいえ、前半部の検証は、公平で詳細で、"和平のための爆撃"論の批判も重要である。著者の主張への賛否はともかく、一読の価値はある。