数学の壁をまず跳んで物理の本質を理解 『ボックス』記事も良い
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第一章『ニュートン物理学と特殊相対性理論における空間と時間』は流石に最初に読む事が必要です。ところが、他の相対性理論の"教科書"と違うのは、数学『Einstein方程式』の解説が第3部に著され、むしろこの解が先に第2部に与えられ本書の真の目的『一般相対性理論における曲がった時空』についての記述の中に当てはめられている処に有ります。この第2章『〜曲がった時空』で時空や宇宙、特にブラックホールについて具体的に"何が起こってどうなっているのか"をかなりのボリュームで詳解しており、『ブラックホールは曲がった4次元時空の幾何学』と題して語られているなど、相対性理論の本質を早い段階で理解させようとした著者の意図は成功したと云えます。手段となる数学については、題材が重力に軸をおいて述べられるため手際よくまとめられています。第3部の初めに基礎を"少しだけ"述べてから、微分幾何学や重力波放射など応用問題へと必要最小限に展開されます。力学系についてくどくど説いてはいません。即ち数学で躓いて物理の本質を見失う事が無いよう、十分な配慮がなされた良書と云えます。なお、『ボックス』と云うトピックスは"だて"に独立した目次が有る訳ではなく、ここには相対性理論の全般にわたり理解を促す実験や、課題、ミニ数学解説など重要な事柄が記載されているので、是非とも気を抜かないで読んで欲しいと思います。