新代田のマシオ
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"マシオさんはそのまま部屋までフルチンで帰ってきて、「ラララヒーを聞こう。」と言った。それははっぴぃえんどの空色のクレヨンのサビの部分だ。皺々のあられもないチンコを降り出したままなのに、その曲がサビ部分になると、マシオさんは嬉しそうに「ラララヒー、ラララフー」、とその華奢な肩と体を揺らして、幸せそうに歌った。それと同時に残尿も床に飛び散った。わたしは大声を出し、腹を抱えて笑った。わたしが、人生で、この「行き場のなさ」とか「どうしようもなさ」とかを初めてわかりあえた、と思えたのは、皿洗いを職業にしている、新代田のこの酔ったおじさんだったのだ。"……
表題作「新代田のマシオ」、「わたしの叔父さん」等、思春期から青年期におけるひび割れた孤独を瑞々しい感性で描いた六編。