鈴木光司氏「リング」を映画化したものだが、原作の趣旨を汲んでいないため、鵺のような意図不明な作品になってしまった。原作(傑作だと思う)の本質は以下にあると思っている。

(a) 原作はホラーではなく、「暁の死線」型のタイム・リミット・サスペンスもの。呪いのビデオや超能力者はサスペンスを盛り上げるための単なる小道具。
(b) 作品の重要なテーマとして父子愛がある。

映画においては見栄えを考えてか、松嶋奈々子をヒロインにしてしまった。これで、(b)の狙いが消えてしまった。原作の主軸は、"息子"が「呪いのビデオ」を観てしまったため、その息子の命を救うため、"父"である主人公が友人の助けを借りながら一週間以内に真相に近づくというもの。この本線が消えてしまった。

また、原作をホラーと捉えているため、単にオドロオドロしい雰囲気を強調する創りの上に、真田広之まで超能力者にするという支離滅裂な設定にしてしまった。結果として、意匠不明な作品になってしまった。また、上記の雰囲気を盛り上げるために必要以上にブルーを強調した画面創りとなっていて、正直見ずらい。これくらい原作を変えてしまうなら、別タイトルで勝負するくらいの気概があっても良かったのではないか。

原作は読んでません。
テレビ版で「高橋克典」が主演していたのをチラッと見て
中々面白そうだと思い、真田広之、松嶋奈々子出演のビデオ版を借りて見ました。

終わってみて・・・ これは相当に面白く、演出も素晴らしい名作でした。
最後の最後まで「貞子」を登場させずに、別の演出で恐怖を煽っているのが大変に良いと思うし
呪いのビデオによって時間制限を課せられた主人公達が
限られた時間の中、ビデオの謎(貞子に関する事)を調べていく展開が
非常にスリリングで引き込まれました。
近年で一番優れていたホラー作品だと思います。

テレビドラマのリング（高橋克典主演の）は
非常に面白かったです。
しかし映画版は？ですね。
密度が非常に薄くなった気がするのですが。
役者もあまり・・、
松島も真田も何処か浮ついた感があり、
しっとりした怖さが再現出来ていません。
松島を出演させるからには、
元夫婦で力を合わせてという構図にする他無かったのでしょうが、
このせいでメロドラマ色が強くなってしまった・・・。
怖い所はテレビから貞子が出てくるくらいしか無いのだから、
それまで淡々とストーリーを繋いで、
恐怖感を増大させなきゃいけないのに。

私は映画は原作が全ての出来を決めると思ってる。ハリウッド版リングも忠実だけど、省略が多く、ダークな色調でごまかそうとしててあまり面白くない。でも、本家のリングは忠実で本当におもしろい。ただ、原作は文章、映画は映像・音という違いがあるので、舞台メイクなどと同じく多少アレンジした方がむしろ忠実になる。時間制限もあるしね。そういう意味じゃこの映画は完璧じゃないだろうか。原作で感じられるエッセンスと全く同じ物を映画でも感じさせてくれた。
　使い古されたようで実はそうでもなかった呪いのビデオでここまで引っ張るのも素晴らしい。失敗すればとてつもなくチープになるはずだっただろうに、成功したから分かりやすく面白くなってる。これも原作のチカラか。

　残念なのが低予算によるものなのか音質の悪さ。映像は有名女優使うことで低予算を感じさせないことに成功してるけど、音は音源が悪いようで全部ダンゴに聞こえる。ハイビット版だとよくなってるのかなぁ。

　松島ななこがキュートだ。こんな生活感の無い、そして声の高い主婦はいない。
　真田もいい味を出している。真田のほうは少し生活感が出ているがこんなかっこいいばつ一はいないだろう。松島との演技では明らかに真田がリードしている。すばらしい役者だ。

　ラストシーンは確かに怖いけれど、じゃあ車ん中で死んだやつはどうやって死なされたんだいって思った。（あげあしとってます）世間に金とって見せる作品なんだから脚本レベルで面白いものを練ってくれ。
　原作も読んだけれど呪いのビデオっていうのがばかばかしくてやっていられない。