予想外のフェティッシュ・コメディ
★★★★★
「ミリセントと薔薇の約束」の完結からさほど間をおかず新作が出ていたのに気づかず、しかも内容が予想外の変化球だったので驚きました。
まず、ネーミングセンスなどの世界観は西洋風ですが、科学の代わりにオカルティズムが発達し、文化度は我々とさほど変わらない近〜現代風。
さらに主人公の少女アイリは超幸運体質(詳細を知れば、あまり嬉しくない幸運ですが)をやっかまれることについて「実力勝負でがんばるしかない」と開き直っていて、前作の主人公ミリセントの一途な素直さとはひと味違った印象です。
さらに、彼女が配属された「七聖守護物対策室(この世界を守る七つの呪物(フェティッシュ)がらみのトラブルを解決する部署)」の面々も素で突き抜けたキャラばかり。命がけの職務から実生活の些細なところまで不運てんこ盛りの青年ハイヅカ、キャリアウーマンでありながら婚活に熱心な美女シアーズ、有能な俺様だけどチビガキコンプレックス丸出しのダリウス、そして本シリーズのマスコット(?)・ルジャインはキモカワ無言人形。(彼? とは筆談でコミュニケーションを取るのですが、発言がなかなか黒い)彼らのアグレッシブな掛け合いが小気味よく、事件の発端から解決まで楽しく読めました。アイリの相手役となるのは不幸青年ハイヅカですが、恋愛の萌芽らしきものは微妙ながら凸凹なふたりの関係は確立できて、これからどう展開していくのか予想不能な分期待できそうです。
そして実体のわからない敵側の少年(まだ名前がわからない)の、嬉々として破壊活動を行うナチュラル・ボーン・キラーぶりも弾けています。彼のさらりと明るく乾いた不気味さは前作に登場したヨナスの飄々とした哀しい狂いぶりとも異なり、今後どんな正体を見せてくれるのかが気になるところです。
ともあれ、この「予想外のフェティッシュ・コメディ」がどう転がるのかに期待をこめて星5つ。