「ハーツ&マインズ」では、若者、というには少しだけ年をとってしまった登場人物たちの、なさけなくてかっこ悪い日常がギャグタッチで描かれる。安アパートで夜ごと「もてたい」とうめく日払いバイトの男。はっきりと人にものが言えず小心者で、いつも貧乏くじを引かされるまじめな青年。あまり深くは考えないが行動力だけはある、焦燥感むき出しの自称硬派…。
いましろたかしの描くこれらの男たちは皆、「おかしいなら笑えよちくしょう、こういう風にしか俺は生きられないんだよ!」という魂の叫びを発している。だから、他人とのかかわりあいや世間との折りあいについて、少しでもつまづいたり悩んだことのある人なら、彼らの行き様に胸を打たれるところがあるに違いない。あまりにも自分の本音に素直で、嘘をつけない彼らは、社会的にははみ出し者だが、実はとても男らしいとすらいえるのだ。せつなくも熱い男気が、おかしくも胸にしみる。
「ザ☆ライトスタッフ」は「ハーツ&マインズ」と登場人物が一部重複しているので、ある意味続編といえるが、前作のヒリヒリした緊張感が緩和されている分、枯れた穏やかさがたち込め、こちらもまた実に味わい深い。追加収録の短編では、どうでもいいように見えるけどやっぱり深い人生の隙間が垣間見える。この一連の作品群の中には流行も幻想もカリスマもいない。ここにはただ、男の真実のブルースがあるのみだ。(横山雅啓)